「バルミューダ(BALMUDA)」の新商品がついに発表された。数日前から同社サイトには新商品の輪郭をぼんやりと写した写真が掲載されており、「自動式掃除機か?」などとSNSでも話題を呼んでいた。
6日の発表会に登壇した寺尾玄・社長は冒頭、「企業も15年目に入り、従業員は100人を超えた。感慨深いものがある」と始めた。「2015年の“バルミューダ ザ・トースター(以下、トースター)”を発売したころ、人々がほしいものは“モノではなくて体験”なのではないかと仮説を立てた」。“トースター”を通じて提供したのは「3分で最高に美味いトーストを食べられる」という体験だった。
そして、今回発表されたのは、誰もが予想だにしなかった“バルミューダ ザ・ライト”だ。しかも子ども向けのデスクライト。今回は一体どんな体験を提供しようと考えたのか。発表会後の寺尾社長いわく、「今回提供したい体験はかなり長い期間になるかもしれない」という。「背中を丸めて顔を机に近づけて絵を描く子どもを見て、目が悪くならないよう、どうにかしたいという個人的な願いからスタートした。じゃあ、なんで目を悪くさせたくないのか、掘り下げてみた。そうすると、夢は目で見るもので、目で見た光景は大きな影響を与える。それが鮮やかであるほど素晴らしいものになるはずだという結論に至った」と製作背景を語った。
“バルミューダ ザ・ライト”では“90%までのデザイン”をテーマに、子どもたちが自由にシールを貼ることで商品が完成するという仕掛けを用意した。「子どもたちにはクリエイティブに育ってほしい。クリエイターになる最短ルートは何かを好きになること。ほんの少しでもそんな気持ちを知ってほしくて、自分のものだという特別感・愛着を持ってモノを使ってもらえる工夫を施した。ライトを何年も使って愛着を持つことこそが、今回提供したい体験だったのかもしれない」。3万7000円という価格設定も、単なるライトという商品に対するものではないというのだ。「価格は自分の消費者感覚でつけている。もちろんLEDの原価が高いという面もあるが、何年もかけてクリエイティブになるための体験をサポートするもので、しかも生涯にわたって“よく見える目を保つため”のものだと考えれば決して高くはないはずだ」。
発表会では、今後の商品ラインアップについて「来年以降、照明カテゴリーで2つほど発表を控えている」と言及した。「2014年に構想を始め、この形でいこうと決まったのは昨年だった。ほしいものだけを作るスタンスに変わりはなく、今後何を作るかは全くの未定(笑)。ただ、照明は身の回りにあふれているので、今回生み出した照明技術は実はいろんなところで活用できるのではないか」。
以前から構想しているというIoT分野については、「もちろん、引き続きチャレンジをしているが、なかなかうまくマッチしない。そもそも、こうした技術がどこまで必要なのか。シンプルに作った方がいいんじゃないかという思いも強い。実際、人を感知して勝手に点灯するライトを作ろうと思えばすぐに作れるだろう。でも、ハードウエアに関しては“モノに触れる”という体験も大切で、モノに触れなくなるIoT家電が果たして幸せなのか、まだ結論が出せない」との意見を強調した。