国内の百貨店で、かつての屋台骨であった婦人服の苦戦が続いている。一方で、2017年夏頃から復調したインバウンド(訪日外国人客)を中心に、化粧品やラグジュアリーブランドは好調だ。インバウンドのなかでも特に多いのが中国人客であることは言うまでもないが、それでは彼らの母国である中国での消費は今どうなっているのか。上海随一の商業地、南京西路のショッピングモール、梅龍鎮広場に出店する上海梅龍鎮伊勢丹の18年春夏の商況から探る。
同店の1~6月の売上高は、前年同期比8.1%減。「17年秋に、近隣に競合の商業施設ができたことで客の流れがやや変わった」(平石有志・上海梅龍鎮伊勢丹 売出・企画担当長)。商業過密が進む中、特に婦人服が落ち込んでいる。これを受け、7月以降はハウスカードのポイント優待キャンペーンやカード会員向けイベントなどを強化し、顧客とのより深い関係性の構築を進めている。その結果、8月のカード会員獲得数は前年同月の2倍、カード会員による売上高は6~8月で前年同期比30%増となった。8月単月の全館売上高は前年同月比4%減となり、回復基調にはあるという。
やや苦戦という中にあっても好調なのは、日本と同じく化粧品だ。同店の客層は「97%が中国人の地元客」で、売り上げ全体の約4割を化粧品が占める。「シャネル(CHANEL)」「トム フォード ビューティ(TOM FORD BEAUTY)」「イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT)」「クレ・ド・ポー ボーテ(CLE DE PEAU BEAUTE)」などのグローバルブランドが並ぶ1階化粧品売り場の売り上げは、1~6月で前年同期比0.8%増と前年実績を超えた。
強みである化粧品のさらなる強化を目指し、4月末に2階靴売り場をセミセルフ形式の化粧品編集売り場「アイビューティー」に転換し、日本で人気のある「雪肌精」「DHC」などを導入。イメージとして近いのは、三越伊勢丹がルミネなどに出店する化粧品の小型編集売り場「イセタン ミラー メイク&コスメティクス」だ。1階化粧品売り場の客は35歳以上が中心だが、「アイビューティー」では30歳以下を掴んでいる。
「アイビューティー」に先駆け、三越伊勢丹は16年1月に、ショッピングモールの上海大悦城に化粧品の編集小型売り場「イセタンビューティー」を出店している。同売り場の18年1~6月売り上げは同7%増と好調。特に、「トム フォード ビューティ」「イヴ・サンローラン」のリップカラーなどが人気といい、客単価は平日が500~600人民元(約8000~9600円)、週末が300人民元(約4800円)という。
セミセルフの化粧品編集ショップでは、上海にはLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)傘下のセフォラ(SEPHORA)があり、梅龍鎮伊勢丹そばにも大型店を出店している。強力なライバルだが、「伊勢丹も日系百貨店として上海で歴史があり、ブランドを集めるという点では難しさはありつつもアドバンテージはある」。今後も「イセタンビューティー」のような小型編集店を、上海以外の都市に出店する計画がある。