EC、AI(人工知能)、スマートウオッチなど、テクノロジーとファッションの結びつきが強くなっている昨今だが、このたび米シリコンバレーのスタートアップ企業サイズミック(SEISMIC)がロボット工学に基づくハイテク素材ウエアを発表した。“着脱可能な筋肉”ともいうべきウエアで、年末までにECでの発売を予定している。
サイズミックを率いるリッチ・マホーニー(Rich Mahoney)創業者兼最高経営責任者(CEO)は、米SRIインターナショナル(SRI INTERNATIONAL)のロボット工学部門のディレクターとして、米・国防高等研究計画局のプロジェクトで軽量人工筋肉の開発に従事していた。その後、サイズミックを立ち上げ、現在までに2250万ドル(約24億9750万円)の資金を調達している。
サイズミックのウエアは、体にぴったりと密着するレオタードのようなデザインで、アンダーウエアとしての着用を目的としている。ウエアの大腿部と腰背部に装置が内蔵されているため重量は2.5kg。通常の衣服としては、まだまだ軽量化の改善が求められているという。使用されているファブリックは、柔軟性と機能性に富んでいる。ファブリック自体が筋肉のように収縮、弛緩するので、体の安定を助け、ユーザーの身体機能をサポートする。終日の立ち仕事やトレーニングの後など、筋肉疲労を感じた時にこのウエアを着用すれば、体の負担が軽減されるという。「このウエアは筋肉をサポートする腱のような働きをする。筋肉に負荷がかかると、ファブリックがその負荷を吸収する仕組みだ」と同CEOはいう。
このウエアはユーザーの姿勢や動作に合わせて自動的に強度を調整する機能を備えている。サイズミックはこの機能を“共生機能(Symbiosis)”と呼んでいる。また、このウエアは使用状況の強度を数値化でき、Wi-Fi 、LTE、ブルートゥースを介してスマートフォンのアプリにデータを送信でき、ユーザーはモバイルアプリで強度を調整することもできる。
ヘルスケア産業でも引き合いがありそうだが、同社は通常の衣服としてアパレル業界で売り出すという。同CEOは「これは着用できるロボットではない。あくまで服だ。われわれの使命は機能性の高い服を作り、人々が快適で自分らしい毎日を過ごせるよう応援することだ」と語る。
年末の発売を予定しているが、今までに類を見ない商品となるため、マーケティングやサービスの充実など、消費者との関係構築のためにやるべきことが山積みだ。アパレル企業との業務提携も模索している。