パリコレにも来てます、ネコ・トレンド。正直言って、これほど多くのネコモチーフがランウエイに登場するとは予想しなかったです。なぜ今、ネコなのでしょうか?イヌでも、ウサギでも、ウマでも、カメでもなく、ネコ。なぜでしょう?
決定打は「ロエベ(LOEWE)」に登場したネコのアクセサリーでした。ジョナサン・アンダーソンによる4シーズン目の「ロエベ」は計算なのか、無意識なのか、とにかくその優れたバランス感覚が発揮された素晴らしいコレクションでした。そして、美しいワンピースの胸元で大きなネコの顔がユラユラ。絶妙なバランスの上に成り立っているパーフェクト・ビューティーに、ネコモチーフがひとつ入ることでフワッと力が抜けます。目を見開いてまっすぐこちらをジッと見るネコは一見するとカワイイというより、少し怖い。でも近くで見ると目や鼻が手描きで脱力します。さらに、アクリルのネコは中にカラフルなスパンコールが入っていて、動かすとキラキラ光ります。
このネコ以外にも、アンダーソンによる4回目の「ロエベ」は、随所にハズシが盛り込まれていました。例えば、ショー会場の椅子もユニークで、いくつかのアクリルボックスの椅子は、中にカミソリやタワシといった日用品がぎっしり詰まっていて笑えました。
何コレ?と思わず突っ込みを入れたくなるそれらのアイデアは、ジョナサン・アンダーソンが考える“ファン(fun)”の要素だとか。「ロエベ」におけるネコも、そんな“ファン”の役割を果たしているようです。ショールーム前の街頭広告には、さっそくネコのビジュアルをババンと掲示しています。
ショールームは、「ダ・ヴィンチ・コード」で有名なサンスルピス教会前の広場に面しており、カトリーヌ・ドヌーヴが暮らすアパルトモンも並びにあります。そんな歴史ある石畳の風景の中にババンとネコ。その違和感が最高です。ちなみに、「なぜ、ネコなのか?」という問いに対しては「特に意味はなし」とのこと。ジャスト・ファン。それでいいと思います。
「アンダーカバー(UNDERCOVER)」にもネコがたくさん登場しました。「アンダーカバー」は、過去に何度もネコを採用してきました。しかし、今回はいつもよりネコが数と種類が多い気がしてショーの後に高橋盾さんに尋ねると「いつもより多め」とのこと。やっぱり。だてに15年以上「アンダーカバー」を見てません(鼻息)。
今季の「アンダーカバー」のテーマは、ルー・リードの曲名でもある“パーフェクト・デイ”。高橋さんにとってのパーフェクト・デイとは?との問いには「ストレスのないリラックスした時間」とのこと。暖かく、リラックスした服を着て、ネコと気ままに過ごす休日。いいですよね。「アンダーカバー」のダークファンタジーな要素はもちろん健在。シュールな女性の顔と、文句なしにカワイイネコ。その両面は多くの女性が持つ2つの顔ではないでしょうか。
他にもネコ柄、そこから発展してヒョウ柄が今季はランウエイにたくさん登場しています。なぜ今、ネコなのか?その答えを求めて「ギンザ」の中島敏子・編集長に話をうかがいました。「ギンザ」2015年12月は「ネコとインテリア」と題して表紙から特集を組んでいます。同号は売れて、予算比120%を達成したそうです。ファッション誌の表紙にネコ。その嗅覚と判断を尊敬します。
以下、ショー会場で行ったショートインタビューです。
WWDジャパン(以下、WWD):中島編集長は、イヌ派ですか?ネコ派ですか?
中島敏子「ギンザ」編集長(以下、中島):イヌもネコも好きだけど、今の気分は断然ネコです。
WWD:特集を組んだきっかけは?
中島:自分自身、夜寝る前など気がついたらSNSのタイムラインに流れてくるネコの動画を見ていたりして、今、疲れている時にスンナリ入ってくるものはネコなんだと思ったことがきっかけです。
WWD:なぜ今、ネコなのでしょうか?
中島:女の子は今、皆ネコになりたいのではないでしょうか?気まぐれで自由に生きて、人からは美しい、可愛い、と言われる。ノンシャランな存在に憧れるのだと思います。
ファッション雑誌である「ギンザ」がネコを題材にした理由がわかりました。ネコは女性にとってある種、達成し得ない自分自身。しなやかな肢体とエレガントな動作、時々お茶目な表情のネコに女性は憧れを抱くのかもしれません。それはまさにファッション的視点です。
情報過多の生活の中で、何にも束縛されないネコに憧れを抱く女性たち。ネコ・トレンドに納得です。
ちなみに、私のペットはカメです。カメもかなりノンシャラン。一年の半分近くは冬眠で寝てますから。