日本のファッション関連企業は、5~10年ほど前までは中国進出に積極的だったが、近年は「ユニクロ(UNIQLO)」のファーストリテイリング、「無印良品」の良品計画を除き、各社苦戦の空気が色濃い。ハニーズホールディングスは6月末に中国の全179店の閉鎖・撤退を発表、他のSPA企業などもトーンダウンは否めない。そんな中にあって好調なのが、日本のファッションジュエリーブランドだ。サザビーリーグが中国本土に18店出店する「アガット(AGETE)」は、規模は小さいながら着実に売り上げを伸ばしている。
2013年に上海に「アガット」1号店を出店すると同時に、サザビーリーグ上海を設立した。2018年1~6月の中国本土の既存店売上高は、前年同期比約10%増。代理商と組み、現在上海に4店と、北京、武漢、重慶、天津、西安などに出店している。「中国のファッション消費は二極化が日本以上に進んでおり、日本でいう中間ゾーンのブランド群がない」(三枝義之サザビーリーグ上海総経理)。そこにちょうどはまったことが好調要因の1つだ。また、日本での展開以上にブランディングに力を入れていることも奏功している。
日本では、コーディネートで提案する色石のネックレスやリングなどが売れ筋。中国でも、ダイヤモンドなどの分かりやすい商品ではなく、色石の商品の構成比が上がってきているという。「ファッションや髪型に合わせて買い足していくという提案が30代以上の女性を中心に支持されている」。顧客は外資系企業に勤める会社員や経営者などで、客単価は3000人民元(4万8000円)超だ。
現地にも周生生などのチェーンのジュエリー店はあるが、「資産として親から子へ送る24金のバングルなどはそうした店で買うという傾向が強いが、この5年で、資産ではなくファッションとしてのジュエリーという捉え方が広がり、ジュエリーの消費がかなり変わった」という。販売員の接客レベルが上がったことで、コーディネート提案がスムーズに進むようになったという面も大きい。
日本以上にEC環境が進んでいる中国だが、中国向けのECサイトは開設しておらず、その予定もないという。「規模を目指すならECを開設するべきだが、ブランディングを大切にしていきたい」。年間の出店ペースも2~3店と控えめで、あくまで日本で培ってきた手法を基礎にする。
日本と大きく違うのは販促面だ。郵送のダイレクトメールは一切用いず、すべてウィーチャット、ウェイボーで顧客にアプローチする。ウィーチャットは販売員のアカウントに付いていた顧客を、ショップのアカウントに移すなど、整理を進めている。電子化が進んでいる中国で販促を試し、将来的には日本に還元するようなことも目指しているという。
積極出店の姿勢ではないものの、7月から店舗のスクラップ&ビルドを進めている。小型店を閉鎖し、ブランドの世界をアピールできるような売り場環境で再出店する。今後は、内陸部ではなく北京周辺や広州周辺など沿岸部への出店を目指し、11月に広州からほど近い深センへの出店が決まっている。