2017年11月に再開したウェブメディア「メリー(MERY)」が9月1、2日、復活後初となるユーザー向けイベント「LUCKY MERY DAY」を寺田倉庫 天王洲アイル キャナルイースト B&C HALLで開催した。入場料は無料で、「ジバンシイ(GIVENCHY)」やポーラの「ディエム クルール(DIEM COULEUR)」「ハーゲンダッツ(HAAGEN-DAZS)」といった協賛ブースをメーンに体験型コンテンツを数多く用意。抽選による2時間の時間指定制、2000人限定のイベントだが、募集開始からおよそ半日ですでに2000人を超える応募があったという。
イベントのコンテンツ部門を統括した森茂穗MERYシニア・クリエイティブ・ディレクター兼「LUCKY MERY DAY」総合ディレクターはイベントを終えて、「印象的だったのは、本当にいいユーザーが来てくれたということ。無料イベントとなるとなかなか熱量の高いファンが集まりづらいが、『メリー』を好きなファンだけが集まり、すごくコンテンツに対して積極的な子が多かったのは素直にうれしい」と振り返る。「メリー」の月間ユニークユーザーは約200万。応募をして会場に訪れた2000人のファンはメディアの相当コアなファンだといえるだろう。「14年に『ポップティーン』で初めてイベントをした際にも読者が並んでくれたが、あの時と同じように、ポジティブな熱量を感じた」。
イベントではコンテンツ(ブース)ごとに編集担当をつけ、記事と同じような製作フローを取り入れた。例えば、「ジバンシイ」が協賛したコスメの体験ブースでは、“花色メイクアップ”という独自テーマを作り、「メリー」が提案する“金木犀”や“秋桜”などをイメージしたメイクを体験できる場を用意。イベント直前には“花色メイクアップ”に関する記事をアップすることで、読者が記事のトレンドをすぐに体感できる場所となった。
こうしたコンテンツが功を奏し、インスタグラムにもイベントに関する画像が数多く投稿された。「ある程度のハッシュタグやフォトスポットは用意したが、僕たちが意図しなかった場所、ハッシュタグでフォトジェニックな写真をアップしてくれるユーザーが多くいた」と森ディレクター。「欲をいえば“帰り道の設計”にもこだわるべきだった。2時間というイベントの中でユーザーはだんだん写真の撮り方を理解していくので、帰るタイミングが一番『メリー』らしい写真を撮ることができる。次回があれば、帰り際にうまく写真を撮ることができる場所を作ろうと思う」。
10〜20代女性向け雑誌の苦戦が続く出版業界だが、メディアらしいコンテンツをリアルな場で再現できる今回のようなイベントには、あらためて大きな可能性があると感じた。森ディレクターも、「ウェブメディアではいくらいい商品を紹介してもユーザーが使ってくれるかどうかがわからない。イベントであれば、その場ですぐにコンテンツを体験できるわけで、こうした新しいメディアの役割をイベントで補完できるのではないか」と強調する。「イベントに来たとあるユーザーが、『普段はあまりメイクを頑張らないけど、“花色メイクアップ”をやって大学に行ったら、人生で初めてそのメイクかわいいねと褒められた』ということをSNSに投稿してくれていた。これこそメディアが目指すべきこれからのPR方法だと感じた。こうした投稿を意図的にしても意味はないが、実際のユーザーが感想を投稿してもらえるようなイベント設計をすることはできる」。
「ユーザーアンケートで得られた満足度は97%だったが、僕個人としては30点くらい。つまり、まだ70点分の余地があるということ。例えば、ユーザーを招いた講習会や規模の小さいイベントを積み重ねるなど、メディアとして新しいイベントの形を生み出せるかもしれない」。