これまでニューヨークで発表してきた「ヴィクトリア ベッカム(VICTORIA BECKHAM)」が、ブランド設立からの10年で初めて、母国イギリスでショーを行った。会場はドーバーストリートにある直営店横のギャラリー。ショー開始前には直営店でドリンクや軽食もサーブされ、お祝いムードを盛り上げた。
ブランド立ち上げからの数年間は、体のラインにぴっちり沿うドレスが中心で、まさに“ヴィクトリア・ベッカム(Victoria Beckham)本人に似合う服”という感じだったが、近頃はシルエットやアイテムの幅がぐっと広がっている。2019年春夏は、複雑なレイヤードときれいな色合わせをポイントにした知的なムードのスタイル。「フィービー・ファイロ(Phoebe Philo)時代の『セリーヌ(CELINE)』に通じる部分がある」と、会場で編集者が話していたのが印象的だ。
10年前はヴィクトリアというと、夫のデヴィッド・ベッカム(David Beckham)の妻やスパイス・ガールズ(SPICE GIRLS)としてのイメージが強く、ブランドを始めたと聞いても、「どうせコマーシャルなものだろう」「本気でやっているの?」などと意地悪なことを思ったファッション業界関係者も少なくないはず。あるバイヤーが、「そういうイメージを覆すくらい真剣に作っているし、商品もしっかりしている」とあの頃話していたのをよく覚えているが、その言葉通り、10年でブランドは着実にモードの世界で立ち位置を得て、それに伴いヴィクトリア本人もビジネスウーマンとしての側面に光が当たるように変わってきた。
ブランドビジネスとしては、17年秋に英国の投資会社に少数株式を売却して資金を得たのに続き、今春はヴィクトリア ベッカム社会長にフランスオートクチュールプレタポルテ協会のラルフ・トレダノ(Ralph Toledano)会長が就任。これによって、更なる事業拡大、強化が予想される。
夫のデヴィッド・ベッカムは、この5月に英国ファッション協会の親善大使に就任。ショーにももちろん子どもたちと共に駆け付けた。会場には他に、キム・ジョーンズ(Kim Jones)らの姿も。ベッカム・ファミリーは、今後も英国ファッションの盛り上げ役を担っていきそうだ。