リカルド・ティッシ(Riccardo Tisci)は9月17日、デビューコレクションとなる「バーバリー(BURBERRY)」2019年春夏コレクションを発表した。3月に前任のクリストファー・ベイリー(Christopher Bailey)からチーフ・クリエイティブ・オフィサー(CCO)のポジションを引き継ぎ、今日までほとんど語られなかったティッシの「バーバリー」に対する思いがコレクション発表後、ついに明らかとなった。
WWD:デビューコレクションではどのようなアプローチを試みた?
リカルド・ティッシCCO(以下、ティッシ):まず、ロンドンにあるアーカイブを研究した。英国スタイルを代表するブランドの一つである「バーバリー」が持つ財産はとても強力だった。今季のコレクションでは、アーカイブと私がかつて英国に住んでいたころの記憶、この5カ月間で強く印象に残った英国人のライフスタイルなどをパッチワークしたようなコレクションになった。「バーバリー」がこれまであまりやってこなかった英国ならではのテーラーリングを採用したり、私のスタイルのイブニングやセンシュアルな要素も取り入れた。
WWD:印象に残ったライフスタイルとは?
ティッシ:今の英国の若者はロックではなくラップを聴く。彼らのファッションに対する見方もとても興味深い。親の服を着てみたり、パンクな古着にオーバーサイズの服を合わせてみたりと、大きく変化している時代だと言える。
WWD:ティーン時代を英国で過ごしたころを振り返って。
ティッシ:渡英した当時は17歳だったが、当時の私はとてもシャイでここでの生活が怖かったし、自分を表現したかったけどできなかった。デザイナーになるかどうかも、セント・マーチン美術大学に入るかどうかも分からなかった。それでも私は英国の全てに興味津々だった。この国には女王もパンクもスキンヘッドも上品な紳士淑女もいて、みんなが強い意志を持っていたことが私に強い衝撃を与えた。今では英国は故郷だと思っていて、このときの経験がブリティッシュスタイルへのこだわりにつながっているのだと思う。
WWD:ストリート人気について思うことは?
ティッシ:私はいち早くストリートがはやると思っていたし、人気はまだまだ継続するだろう。ストリートウエアは好きだが、デザインや洗練性といった要素を忘れがちでもある。私にとってファブリックやボタン、カッティングはとても重要なんだ。夢のあるものを作りたいと思う一方で、現実主義者だからリアリティーを含ませたいとも思う。
WWD:バーバリーでの生活は?
ティッシ:社員はファミリーのように親密だ。既存のチームはイギリスの象徴ともいえるこのブランドに全力を注いでいる。マルコ・ゴベッティ(Marco Gobbetti)=バーバリー最高経営責任者(CEO)は私を見出してくれた人物で、父親のような存在。彼がいるバーバリーはわが家のようだ。オフィスも隣同士で、いい化学反応が起きていると思う。彼は私が若いころから、今現在もビジネスについて教えてくれる。彼のことは常に尊敬していて、この業界でデザイナーとビジネスマンの間でこうした信頼関係を築くことができるのはとても貴重なことだと思う。
WWD:ティッシにとって「バーバリー」とは?
ティッシ:私にとってはあらゆる人間を体現するブランドだと思う。トレンチもあればカーコートもある。でもそれは一つの側面にすぎない。アーカイブを研究すると、それ以上の要素が出てくるし、クラシックだが同時にとても強い存在感がある。
WWD:「バーバリー」といえばトレンチコートだが、トレンチコートについて何を考える?
ティッシ:私はあまりトレンチ派ではなかったから、これまでトレンチコートを作ったことはなかったと思う。でも、今では大好きだ。トレンチの歴史を知るとどれだけ進化しているかが分かる。また、英国紳士を代表するアイテムとして始まったトレンチコートが、皆が持っているメジャーなアイテムになったことに驚きを感じる。