「トーガ(TOGA)」がここまでスポーティーなのは珍しい。ファーストルックに登場したネオプレーンのサイクリングパンツが象徴するように、スポーティーなアイテムをドレスアップして着るのが今の気分のようだ。その理由についてデザイナーの古田泰子は、「最近みんな、洋服を必要としているというより、自分たちの体をどう見せるかに興味があるような気がする。『トーガ』は今までそういったことにチャレンジしてこなかったけど、今後のファッションに必要なことだと思ってトライした」と話す。
シンプルなスポーティーに終わらず、ギャザー・プリーツ使いやスカーフなど装飾を加えているのは、「スポーツウエアで出かけている人が多いのを見て、それをドレスアップしてみようと思った」から。足元はネオンカラーをアクセントにしたスニーカー風のブーツ、手にはメッシュのスポーツバッグ。ジャケットもシャツもニットも袖は通さず、肩に羽織るような着方が軽快な印象につながる。
古田デザイナーの強みのひとつは人間観察力だ。周囲の人の何気ない言動から時代の空気を読み解き、女性たちの心のツボを絶妙なタイミングでついてくる。今季で言えばそのツボは、“自分の体をデザインする”とか、“健康的な肌見せを楽しむ”といった女性心理にあるようだ。確かに最近、ジムで適度に鍛えた体をベースにシンプルなタンクトップでさらりと肌を露出しつつ、アクセサリーやメイクでドレスアップするような女性たちが増えている。
ただし、完璧には身体をコントロールできていない自分も許してしまうような“ユルさ”と、健康志向への反骨心をわずかにのぞかせるのも「トーガ」らしさ。コートの上につけるギャザーのブラトップなどでウィットを利かせている。ヨーロッパの街角にありがちな石像のプリントやインドで見た花柄、旅先のアジアで出合ったプリントなど、世界各国の要素を散りばめることで、自由に旅する女性たちの姿も連想させる。