シャネル(CHANEL)は17日、パリ北部のポルト・ドーベル・ヴィリエでメティエダール新施設の起工式を執り行った。“メティエダール”とはフランス語で“手仕事”の意味を持ち、シャネルは刺しゅうや羽飾りなど、職人技をふんだんに取り入れたメティエダール・コレクションを発表している。新施設はその製造拠点になる。
式にはアンヌ・イダルゴ(Anne Hidalgo)=パリ市長と、同施設をデザインした建築家のルディ・リッチオッティ(Rudy Ricciotti)も出席し、ブルーノ・パブロフスキー(Bruno Pavlovsky)=シャネル ファッション部門プレジデントが礎石を据えた。
2020年に完成予定の地上5階、地下2階の総面積2万5500平方メートルとなる同施設は、シャネル子会社のパラフェクション(PARAFFECTION)が管理する26の専門アトリエの多くを集結する場所となる。同ファッション部門プレジデントは、「これからも雇用を生み、国際的にも評価の高いパリの技術育成に努める。また世界中のファッションブランドが集まる創造と革新の場所にしたい。都会的な建築物としても、革新と環境維持のためにもユニークな場所にする」と話した。
06年にフランス建築大賞を受賞したリッチオッティは、革新的な手法でコンクリートを使用し、ヨーロッパ地中海文明博物館やルーヴル美術館のイスラム美術部門展示室を手掛けたことで知られるが、シャネルの新施設について「誰にもまねできないものにする」と語った。
シャネルの新施設の登場で、地元への経済、文化的な貢献も期待されている。新施設が建つポルト・ドーベル・ヴィリエは、パリ19区とオーベルヴィリエの間に位置する急速に開発が進んでいるエリアだ。住民には移民も多く、その国籍は136に上るという。同ファッション部門プレジデントは「この施設の目的は、専門アトリエを1カ所にまとめるだけではない。フランスの創造的活動と地域の経済活動の支援も行う」と話した。リッチオッティも「産業に携わる者は、政治的にも経済的にもその手法を広める責任がある。その意味においてシャネルは素晴らしい功績を築いている」と語り、同地域について「中産階級と労働者階級が交じり合う場所だ」とした。
またイダルゴ市長は、シャネルがアトリエをパリに持ち続けることについて、「パリが世界のファッションの中心であり続けることへの貢献だ」と称賛した。同日は、側近のブルーノ・ジュイヤール(Bruno Julliard)副市長が突然の辞任と離反を表明する中、同市長はシャネルの起工式に駆けつけた。
シャネルのパリへの貢献は新施設の建築だけではない。グラン・パレの大規模な改築に2500万ユーロ(約32億5000万円)の支援を、モードとファッションの博物館として知られるガリエラ美術館の常設展示室の設置にも約500万ユーロ(約6億5000万円)を提供するという。