「プラダ(PRADA)」といえば、もちろんミラノを代表するブランドの一つ。「グッチ」の勢いに比べると近年はやや落ち着きムードが否めないが、2019年春夏のミラノのランウエイに、「プラダ」が前シーズン出していたネオンカラーのアイテムが溢れているのを見ると、影響力はやはり絶大だ。ロンドンでもミラノでも、コレクション会場では18-19年秋冬の「プラダ」メンズが出していたバナナ柄シャツを非常によく見かけるし、日本の百貨店店頭では、「『プラダ』は復調傾向」といった声もよく聞く。
そんな「プラダ」ウィメンズの19年春夏のポイントは、まず3人の女性建築家とコラボしている点。ここ数シーズン、ウィメンズでもメンズでも、シグニチャーであるナイロンバッグに再び光を当てているが、今回は3人の女性建築家と組んでナイロンバッグを作った。日本からは妹島和世が参加。今はあらゆるブランドや企業が話題性や拡散性を求めてコラボ商品を作る時代だが、セレブなどと組むミーハーなコラボではなく、建築家と組むという骨太な志向がいかにも「プラダ」らしい。
妹島とのコラボでは、ジップによって分解できるトートバッグや、妹島本人がショー会場で「枕のような、ペットのような」と語った体に巻き付けるボディーバッグを企画。米国の建築家、エリザベス・ディラー(Elizabeth Diller)による、衣装カバーをそのままドレス兼バッグにしたアイデアも面白いし、イタリアのチニ・ボエリ(Cini Boeri)による高機能トートバッグは働く女性に重宝されそうだ。
そして、ウエアのポイントはというと、キーの1つになるのはクラシックという言葉。ユニホームを思わせる金ボタンのコートやワンハンドルのハンドバッグなどはまさに直球のクラシック。しかし、もちろんそれだけにはとどまらない。ニットやシャツの胸元や背中の大胆な露出で主張する女性性の一方で、バミューダショーツやニット地のサンダルで見せる少年的で軽快なイメージ、タイダイ染めの力強さとビジュー装飾の繊細さ。ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)は“女性の多面性”を常に掲げているというが、まさにその通りで、1つの言葉で簡潔に括ることはできない。
「あなたはこれを見て何を思う?」「あなたにこれが着こなせる?」と挑戦されるような感覚と、キャッチーなモチーフや柄(今皆が着ているバナナ柄や前シーズンのネオンカラーアイテムはまさにそれだ)で表現する、分かりやすいチャーミングさのバランス。それこそが「プラダ」の醍醐味であると再認識すると同時に、今季はややキャッチーさよりも挑戦のニュアンスが濃い印象。