DMM.comは9月25日、3Dプリンターの技術を使ったファッションブランド「ギディーアップ(GIDDY UP)」のお披露目となるファッションショーをパリ・ファッション・ウイークで開いた。デザイナーは「ミキオサカベ(MIKIO SAKABE)」の坂部三樹郎と、「ハイダー アッカーマン(HAIDER ACKERMANN)」などで経験を積んだ発知優介の2人。DMM.makeが提供する3Dプリンター技術を使い、スニーカー、アクセサリー、付属品を用いたウエアを制作した。
ブランドの核となるアイテムは、モデル全員が着用して登場したスニーカーだ。従来スニーカーを一から作る場合、膨大な資金を投じて金型を作らなければならないが、3Dプリンターを使えば1足からコストを抑えて好きな形にソールやヒールを形成できるという。今回発表したのは有機的な形のソールと無縫製ニットのアッパーとドッキングしたものや、厚底のバネ型のソール付きのスタイルなど。ソール部分はイエローやオレンジ、グリーンなどの鮮やかなカラー、半透明やマットなどの質感を組み合わせたアイキャッチなデザインだ。一部3Dプリンターの技術が追い付かず、希望していた素材を使用できなかった部分があったという。ショーでは問題には見えなかったが、商品化にはクオリティーの向上が必要だという。
ウエアは、パラシュート素材のような軽い素材感のジャケットとパンツのセットアップやワンピースなど軽快なスタイルだ。随所に3Dプリンターで作ったマグネット入りのシリコンの留め具や、ブランド名を入れたホログラムシートを装飾しながらも、民族衣装に用いられる刺しゅう、斑に模様が入ったジャカードを部分的に取り入れて、未来的な要素と伝統やクラフツマンシップなどの融合を試みた。キャスティングも人種も性別も異なるモデルを起用し、多様性のメッセージも感じ取れた。
一方、見せ方にもう一工夫がほしかった。せっかく3Dプリンターという武器があるならば、もう少しその技術の魅力を伝える方法があったはずだ。会場外ではスニーカーを数足ディスプレーし、3Dプリンターで作った付属品を客席に置いていたが、それだけでは、これを作るのに3Dプリンターでなければいけない理由が伝わってこなかった。また、パリで展示会は行わず、登場させたアイテムは参考商品のため2019年春夏の量産や販売は未定だといい、そこにビジネスが生まれる気配がなかった。一発勝負のランウエイショーで、ゲストにとって「あれは何だったの?」「機能性はどうなの?」という疑問が残るもので、実際にそのような声を来場者たちから聞いた。世界へ3Dプリンターの技術発信と、海外での協業先との出会いを目的としているならば、多くのファッション業界の人々を巻き込めるよう、次の発表で進展を望みたい。