米小売最大手のウォルマート(WALMART)がVR(仮想現実)技術を店舗従業員のトレーニングに導入する。同社は、米VR企業ストライヴァー(STRIVR)と業務提携しており、10月から年末までに1万7000台以上の“オキュラス・ゴー スタンドアローン(OCULUS GO STAND ALONE)”のVRヘッドセットを米国内の約4700店舗に配備し、ゆくゆくは国内全店舗に展開する予定だ。これは2017年に発表したウォルマートアカデミー(WALMART ACADEMY)プログラムの一環だ。ストライヴァーはVRを使ったアメリカンフットボールのトレーニング・プログラムの製作などを専門としている。
ウォルマートは現時点で45の研修プログラムを用意している。クリスマスのショッピングシーズンのごった返す店舗の様子をVRで再現し、顧客対応を訓練するプログラムなどがある。現実世界では再現が難しい環境もVRなら疑似体験が可能だ。またVRを利用すればインストラクターが不在でも、店舗に機器が設置されていなくても、新しいテクノロジーを習得できるという。今夏には10店舗から選ばれた従業員が「ピックアップタワー(PICKUP TOWER)」と呼ばれるピックアップ専用機の操作方法をVRで学習した。
アンディ・トレイナー(Andy Trainor)=ウォルマートU.S.アカデミー シニア・ディレクターは同社のブログで「VRの素晴らしいところは、実際に体験しながら学習できることだ。VRヘッドセットを通してトレーニングモジュールを見ると、脳は現実の体験と同じように認識する。VRトレーニングを利用した場合の習得率も高く、習得度テストでは10~15%の改善を見せている。さらに特筆すべきは、VRトレーニングを受けている従業員の様子を見ているだけで、他の従業員の理解度も上がったことだ」と評価している。
建築業や不動産業などでもVRの利用は広がっているが、小売業界では顧客のブランド体験ツールとしての活用が多かった。これからはさまざまなビジネスの現場でVRの実用化が進みそうだ。