「マメ(MAME KUROGOUCHI)」は、2度目のパリコレの挑戦で、日記という習慣と、祭りという代々受け継がれる伝統をもとに日本の美意識を表現した。
今季に限ったことではないが、「マメ」のデザインは日本の古き良き技術や伝統をモダンに解釈し、日本人が忘れ、知らなかった和の魅力を気づかせてくれる。繊細で、色気があり、強く、かつやさしさも兼ね備えているこのバランスは「マメ」にしかない唯一無二の世界観だ。
“The Diary”と題した今季は、デザイナーの黒河内真衣子の日記を通して制作された。4月1日~6月17日で、1日1着デザインと1枚の写真を綴っていったという。その日々の慣習をウエア、アクセサリーへと商品化するという実験的なアプローチに挑んだ。
コレクションの着想源は、明治時代から昭和初期まで活躍し日本で女性初の文化勲章を受章した日本画家の上村松園の作品と、日本の祭りの着物、伝統的な民族衣装だ。上村の絵からは美しい色彩を抽出している。さわやかな青藤色や、黒を差し色に使う技法を用い、コレクションを彩った。祭りは、黒河内が足を運んだ日本各地の祭りの中からさまざまな要素を取り入れているといい、特に秋田の西馬音内盆踊りが代表的だという。西馬音内盆踊りの衣装の異なる模様や生地の組み合わせは、ニットの編み地と柄で再現。着物のようなアウターは、大きな袖からでる手首や、抜き襟から覗くうなじなどを美しく見せる。他にも半襟風のスカーフや帯のようなベルト使いなども、着物の魅力を細部まで取り込み独特なシルエットを描く。ここまで和の要素を取り入れていても、現代の女性が安心して袖を通すことができ、着る人を美しく見せるのは「マメ」の服の力だ。
「マメ」が東京都と繊維ファッション産学協議会のファッションコンペ「ファッション プライズ オブ トウキョウ(FASHION PRIZE OF TOKYO以下、FPT)」の支援を受けてパリでコレクションを披露するのは今季で最後。10月に行われる東京ファッション・ウイーク中には、来季(2019-20年秋冬シーズン)パリコレデビューを果たす日本のブランドが「FPT」から選出される。
「マメ」の発表方法は、1度目はモデルのプレゼンテーション形式と、今季の1日5回のミニショー形式だった。いずれもパリ・ファッション・ウイークのオフスケジュールだが、この2シーズンで世界中の多くの人へブランドを紹介する機会になっただろう。“あせらず、ゆっくり、慎重に”が「マメ」のスタンスだが、来季も継続してパリでの発表を続けていけば、もっとブランドを広く、深く、多くのオーディエンスに届けられるポテンシャルは大きい。