ビジネス

成長を続けるフォーエバー21の戦略 3年以内に企業規模を2倍に

 フォーエバー21のドン・チャン創業者兼最高経営責任者(CEO)が、3年以内に企業規模を2倍にする成長戦略を明かした。店舗数もおよそ2倍の1200店舗を目指す(現在はアメリカに469店舗、世界に131店舗を出店)。

 今年5月、カリフォルニアのアゼリア・ショッピング・センター内にオープンした新コンセプトストア「F21 レッド(F21 RED)」が成長のカギだという。「F21 レッド」は価格を重要視する消費者のためのショップで、「フォーエバー21(FOREVER21)」のアイテムからセレクトした一部商品のみを扱う。1ドル80セント(約181円)のキャミソールや3ドル80セント(約383円)のタンクトップ、4ドル80セント(約484円)のビキニなど、「フォーエバー21」に比べて低価格帯の商品が多いため、利益率は低い。集客目的のため、採算を度外視して「F21レッド」を始めたとの声もあるが、チャンCEO は、「集客目的も出店の1つの理由だが、利益はもちろん出している。価格を抑え、商品ごとの利益を減らす一方で、商品量を大幅に増やした」という。「ビジネスを続けるためには発展し続けなくてはいけない。消費者の意見を聞き、それをすぐに取り入れることが必要だ」とチャンCEO。「F21 レッド」は消費者の要求に応えるかたちで出店したショップだという。

 「オムニチャネル化を進めるブランドやオンラインビジネスの台頭によって、中小企業は苦しい局面に立っている。特に小売業態の小さなビジネスでは、すぐに対抗企業が出てくる。それらに負けないよう、新たに需要が生まれたマーケットには、いち早くブランドらしさを注入したい」とチャンCEO。専門家は、「『H&M』がヨーロッパの雰囲気でモダン・ベーシックを追求し、『ザラ(ZARA)』が比較的高価格のアイテムを打ち出すなど、競合企業がブランドらしさを主張している。その中で、『フォーエバー21』は低価格帯のファスト・ファッション・ブランドとしてトップを維持している」という。

 しかし、成長を続ける一方で、生産に関する問題は山積みだ。これまでフォーエバー21は、商標権をめぐって競合企業から何度も訴えられている。今年1月には、米労働衛生安全庁から避難経路の整備などに関して、安全性への指摘を受けた。また、2013年に起きたバングラデシュの「ラナ・プラザ」崩壊事故を受け、多くの小売企業が火災などに対しての安全対策協定を結んだ際に、フォーエバー21はこれを受理しなかったことで非難を受けた。これに関してチャンCEO は、「07年に独自の規定を作り、高水準な安全と人権擁護を目的として、仕事ができる環境を整備した。我々が協定にサインしないのは、厳しいルールを創業当初から設けているからだ」とコメントしている。

 専門家はチャンCEOの経営について、「『F21 レッド』店舗を拡充し、ビジネスを広げることに注力している。3年という期間はかなりタイトな設定で、出店予定店舗だけで成長目標を達成するのは厳しい。今後さらなる店舗出店が必要になるだろう。相当の企業努力と既存店売り上げの維持が不可欠だ」と指摘した。なお、フォーエバー21は非上場のため、既存店売上高を含む財務データを公開していない。

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