伊藤忠商事はフィンランドの森林業大手のメッツァ・グループ(METSA GROUP)と共同で、50億円を投じ新たにセルロース繊維のパイロット工場を設立する。原料にパルプを使用するセルロース繊維は、欧米の大手SPAやアパレルなどを中心にサステイナブル素材として再び注目を集めている。伊藤忠は2008年から独自のプログラムで普及に取り組んできたオーガニックコットンに加え、今年5月には再生ポリエステル事業を行う日本環境設計へ出資しており、サステイナブル素材のグローバル展開を強化する。
メッツァ・グループの中核会社はセルロース繊維などの原料であるパルプの世界最大企業メッツァ・ファイバー(METSA FIBRE)で、伊藤忠は2012年に建材や紙パルプ、不動産事業を展開する住生活部門が約500億円を投じて25%の株式を取得、持分法適用会社にしていた。セルロース繊維の新工場は、メッツァ・ファイバーの主力工場内に併設。パルプから繊維までの一貫生産体制を確立。さらに独自に開発した特殊な溶剤を使用することで、環境負荷を低減している。
メッツァ・ファイバーはパルプ生産がメーンで、繊維・アパレル分野への進出は初めて。そのため新セルロース繊維の開発と生産をメッツァ・ファイバーが、糸の販売とマーケティングを伊藤忠の繊維部門が担う。パイロット工場の生産能力は年350トンだが、2〜3年後には設備を増強し、量産化に持ち込みたい考え。セルロース繊維は、オーストリアのレンチング社が圧倒的な世界シェアを握っているが、伊藤忠の広報担当者は「原料のパルプから一貫生産しているためコスト競争力は高く、環境負荷の低さも大きな武器になる。単なる糸販売だけでなく、原材料から最終製品までのトレーサビリティやブランディングを武器に、欧州のラグジュアリー・ブランドや米国の大手SPA、ファストファッションブランドなどを開拓したい」と語る。