バッグ・アクセサリーブランドを展開する英アニヤ・ハインドマーチ(ANYA HINDMARCH)の2017年12月期の売上高は前年比10%減の3720万ポンド(約55億円)、税引前損失は2820万ポンド(約41億7300万円)と、前年度の損失の倍以上の額となった。
同社は小売り戦略を見直し、イギリスや日本の小規模店舗など8店舗を閉めた。これには英老舗百貨店のハウス・オブ・フレーザー(House of Fraser)、ハーヴェイ・ ニコルズ(Harvey Nichols)の店舗も含まれる。
今後はイギリス、米国、アジアで展開する旗艦店や販売店、フランチャイズショップなどの33店舗を主要な販路としながら、ECやポップアップストアなどでブランドの存在感を発揮し、顧客との関係構築のためデジタルや体験型イベントに投資して業績回復を図る。
また同社はフランチェスコ・ギアンナッカリ(Francesco Giannaccari)の後任としてアントワーヌ・ベジュー(Antoine Bejui)を最高経営責任者に迎えた。ベジューは前職でバルマン(BALMAIN)の最高財務責任者を務めていた。バルマンもアニヤ・ハインドマーチもカタールの投資会社メイフーラ・グループ(Mayhoola Group)の傘下にあり、同グループは17年にアニヤ・ハインドマーチに1600万ポンド(約23億6800万円)を投資している。
「アニヤ・ハインドマーチ」は18年からロンドン・ファッション・ウイークへの参加をやめ、代わりに顧客と直接的なコミュニケーションができるユニークな体験型イベントを主催している。2月には同ファッション・ウイークの開催に合わせて、14日のバレンタインデーから真っ赤な巨大ハート型バルーン“チャビー ハート バルーン(おデブなハート型バルーン)”30個をロンドンの名所29カ所で展示。さらに9月の同ファッション・ウィーク時には、“チャビー クラウド(おデブな雲)バイ アニヤ・ハインドマーチ”という3日間のイベントをウェストミンスターにあるバンケティング・ハウス(晩餐会や舞踏会などに使われるホール)で行った。来場者は雲のような真っ白な巨大クッションの上で飛んだり跳ねたりと自由に動き回ったり、寝そべってライブコンサートや朗読に聴き入ったり、瞑想のレクチャーに参加したりとリラックスした時間を楽しんだ。同イベントは3000人が来場し、会場内のギフトショップの売り上げも上々だったという。
アニヤ・ハインドマーチ=デザイナーは、「これまでの常識だったビジネスモデルは通用しないことを肝に銘じ、新たな挑戦をしていかなくてはならない」と語り、「消費者のショッピング環境が急速に変わっていく中で、ビジネスを最適化していく必要がある。これまでにない斬新な方法で顧客との関係を築いていく。まだ始まったばかりだが、“チャビー ハート バルーン”や“チャビー クラウド”のキャンペーンが高評価を受けて非常にうれしい」と話した。
17年には、自由にパーツを選んで作り上げるバッグ“ビルド・ア・バッグ(BUILD A BAG)”コレクションを発売。シンプルなデザインのボディーに、付け替えのハンドルや、ストラップ、チャームなどを加えて自分だけのオリジナルのアイテムを作ることができる。同コレクションはグローバルで展開され、ニューヨークのバーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)での最初のポップアップイベントでは、1週間で15万ドル(約1710万円)を売り上げた。
アクセサリーカテゴリーではクロスボディーストラップやチャーム、ステッカーなどでカスタマイズできるスマホケースを販売し、フレグランスキャンドル・ライン、“アニヤ・ハインドマーチ スメルズ(ANYA HINDMARCH SMELLS)”も扱っている。