2015-16年秋冬のインターナショナル・ブランド(特選)売り場を総括すると、前年売上高を上回る店舗が多く、まずまずの着地だった。宝飾品や時計は、2ケタ増のブランドが多く、ここ数シーズンは、ブランドのアイコンモデルが売れる傾向が続いている。これまで売り上げをけん引してきたインバウンド消費は、訪日観光客が欲しいものを一通り購入し一巡したことから、選ぶ商品も少しずつ変化がみられるようだ。1月27日には、三越銀座店8階に空港型市中免税店がオープンし、さらなるインバウンドの囲い込みを狙う。
一方で、そろそろインバウンド消費も徐々に鈍化傾向になるのでは、という声も多く聞かれた。インバウンドがこれまでのように伸びないなら、どこに売り上げアップの可能性を見いだせるのか?その可能性の一つがメンズ市場だ。ウィメンズとメンズの複合型ショップのオープンやメンズオンリーのブティックをオープンする百貨店も徐々に増えており、メンズ売り場で潜在顧客を掘り起こしたい考えだ。
インバウンド消費額の伸び率は緩やかに
前年割れしている店舗はないが、インバウンド消費額は2015年春夏に比べると伸び率は緩やかに下がった。中国人をはじめとする訪日者は欲しいものを購入し、ある程度一巡したという声が多かった。松屋銀座の宝飾・時計フロアは、6〜8月がピークで9月は為替の影響で落ち着いたが、インバウンドはそれでも売り上げの6割を超える。同店の「シチズン(CITIZEN)」は8割が中国人客で、8月に店舗の外壁や正面ウインドーをジャックしたり、銀座駅やデジタルサイネージを実施したりしたことで売り上げが飛躍的に伸びた。「夏まではスーツケースを持参する方が多かったが、秋以降は、商品を吟味して購入する傾向にある。単価は下がっていないので、ブランドについて勉強したり、商品知識を得たりしてから購入しており、買い方が日本人客に近くなっている。リピーターも増えた」(松屋銀座 宝飾・時計)。
「フェンディ」「サンローラン」「ヴァレンティノ」が好調
ジュエリーはアイコンモチーフが人気
ジュエリーは、2ケタ増のブランドが多く、軒並み好調だった。インバウンドでブランドを代表するアイコンモチーフがここ数シーズン売れていたが、現在でも「カルティエ」では“LOVE”や“トリニティ”、「ヴァン クリーフ&アーペル」では“アルハンブラ”、「ショーメ」では“ジョゼフィーヌ”といった具合に、依然人気が高いようだ。「ブルガリ」は昨年、9月8日から11月29日まで東京国立博物館でレトロスペクティブ展「アート オブ ブルガリ 130年にわたるイタリア美の至宝」を開催し、外商の売り上げアップに貢献した。「『ブルガリ』はインバウンドなら“ビー・ゼロワン”、日本人は“ディーヴァ”に移行。ただ、インバウンドは急速に上質化が進み、日本のニーズとほぼ一緒になってきた」(伊勢丹新宿店)。
国内ブランドでは、パール商品が根強い人気で、松屋銀座では50万〜100万円のパールが人気を集めた。同店では「ミキモト」の商品ケースを倍に増やしたところ、前年比4倍の売り上げに。また、高島屋もパールが好調で「ミキモト」は2ケタ半ば増の売り上げだった。同店では、グランドハイアットなどのホテルの催事にも力を入れ、日本橋店、横浜店といった外商に強い店舗は予算超えするなど好調だ。「タサキ」は松屋銀座では、インバウンドの売り上げが前年同期比2ケタ後半増だった。今後は、イベントや催事でブランドの知識を深めてもらったり、体験型ツアーで“コト消費”する傾向が増えそうだ。伊勢丹新宿店では「this is japan.」をテーマに、海外ブランドと日本の精神性や技術をコラボレーションさせたエクスクルーシブな商品を企画していくという。
メンズ売り場強化で新規顧客の獲得を狙う
松坂屋名古屋店は、4月21日に北館をメンズ中心の館「マツザカヤ ジェンタ」に改装し、1、2階でインターナショナルメンズフロアを強化する。(関連記事 2月22日号P.5参照)。1〜3階は、メンズを中心とした大人のファッション、4階はゴルフウエア、5階はジュエリーとウオッチで構成する。中でも1階はメンズとウィメンズの複合ショップをメーンにしているのがポイントで、名古屋初出店になる「フェンディ」と「ヴァレンティノ」かが出店する。「モンクレール」は国内最大級のメンズオンリーショップをオープンする。2階には、名古屋地区初の「トム フォード」や日本1号店の「ベルスタッフ」が出店する。3階では東京以外では初の「三陽山長」が入る。すでに大丸京都店2階の特選売り場は「プラダ」「グッチ」「バーバリー」「ドルチェ&ガッバーナ」「サンローラン」をはじめとするブランドがメンズとウィメンズの複合店を構えており、それを松坂屋名古屋店でも踏襲するかたちになる。「ヴァレンティノ」は昨年4月に神戸大丸店をリニューアルし売れ行きが好調で、特にメンズの動きがいいという。大丸心斎橋店、博多大丸店に出店した「クリスチャン ルブタン」はメンズも好調だ。ここ近年は、ウィメンズとメンズのコレクションで同じテーマやムードを提案するブランドが増えており、女性がメンズウエアを着用したり、その逆のケースも多い。さらに、百貨店は、従来の年齢やターゲットで区切るフロア構成に執着しない傾向にあり、今後、このウィメンズ・メンズ複合型ショップがどこまで浸透していくのか注目だ。
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