エディ・スリマン(Hedi Slimane)は、9月28日に発表した「セリーヌ(CELINE)」でのファーストコレクションに対する批判に、仏TV番組のメールインタビューを通じて反論した。エディのショー後初となるコメントを公開したのは、仏TMCチャンネル(TMC channel)のジャーナリスト、ロイク・プリジャン(Loic Prigent)によるモード番組「5 Minutes de Mode by Loic Prigent」だ。
プリジャンは、10月3日夜の同番組内でまずエディによる「セリーヌ」に対するさまざまな反応を紹介。10年の在任期間で「セリーヌ」を大人の女性のためのラグジュアリーブランドに成長させた女性デザイナー、フィービー・ファイロ(Phoebe Philo)をエディが継いでアーティスティック、クリエイティブ&イメージディレクターに就任したことと、ドナルド・トランプ米大統領(Donald Trump)が大統領選でヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)を蹴落として大統領に就任した図が似ているとし「エディはファッション界のトランプか」と投げかけた批評もあった。その後、エディのメールインタビューの内容をスクリーンに映し出して紹介した。
エディは批判に対し「非常に不快だし、どうやら人々は常に誰かのことを悪く言いたいようだ。あのショーの真意は明るく、楽しいものだった。しかし今日、明るさや快活さはやり玉に挙がってしまうのだろう。『サンローラン(SAINT LAURENT)』でもこれを経験した。皆パワーゲームや売り上げの影響とか、予測できた振る舞いといったことで論じているのだろうが、信じられないほど保守主義と厳格主義に偏ってしまっている。SNSは素晴らしいコミュニティーツールだが、人々を扇動する力を持っており、言葉による暴力は僕たちの時代を反映している。限度というものはもう存在せず、憎しみは増幅され、すべてを飲み込んでしまう」とコメントしている。
さらに、マイクロミニ丈のドレスが多数登場したことに対し、特にアングロ・サクソン系のメディアやジャーナリストが批判したことに対しては「これは、女性はもう自由にミニスカートをはいてはいけないということか?トランプ大統領と比較した批判は、まあまあ面白いジョークを交えたというよりも、日和見的で便乗したものでしかない。僕のショーに登場したのは自由で気ままな若い女性だから。彼女たちは自分たちに似合うものを自由に着るだけ」と返した。
また、女性デザイナーで「セリーヌ」成長の功労者であるフィービーの跡を継いだことに対してアメリカが特に過剰反応していると指摘。「アメリカの一部では、女性の跡を継いだ男性である僕はセンスがないとされている。その批判の裏にある同性愛者嫌悪に皆が気づけず追随したことに驚いた。男性によるウィメンズ・コレクションが問題なのか?まさかこのコレクションがこういう露出につながるとは思わなかった。ここまでとは予想していなかったよ。結果として、フランスの個人主義と『セリーヌ』の寛容なイメージがより明確になった」と語った。
プリジャンは、上記のようなエディのコメントはメールインタビューのほんの一部であるとし、その全貌は彼の52分間のTV番組「52 Minutes de Mode」のパリ・ファッション・ウイーク特集で明らかにするとした。
「セリーヌ」の他、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「ディオール(DIOR)」「フェンディ(FENDI)」など、ビッグメゾンを抱えるLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)は、エディによる「セリーヌ」の売上高が5年以内に2〜3倍になると期待している。ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)LVMH会長兼最高経営責任者は、プリジャンの「エディのファーストコレクションを見た感想は?」という質問に対し、「すごく気に入った!(I loved it!)」と返した。