ファッション業界にもAIの波が押し寄せている。弊紙「WWDジャパン」でも9月24日号でファッションAIに関する特集を行ったが、その中で日本国内におけるファッションAIの現状について先進企業5社を紹介した。ウェブでは先進企業5社に聞いたAIに対する考え方をインタビュー形式で紹介する。第4回は、人工知能を備えたファッションアプリ「センシー(SENSY)」を筆頭に企業の需要予測、マーケティング支援など幅広いAIソリューションを提供するセンシーをピックアップ。渡辺祐樹・最高経営責任者が考えるAIの未来とは。
WWD:センシーの事業内容とは?
渡辺祐樹・最高経営責任者(以下、渡辺):2014年にファッションアプリ「センシー」をスタートし、16年以降は企業向けの需要予測やマーケティング支援といったBtoB事業を本格化した。この成果が出てきたこともあり、今年は企業への導入を広げている。今後は商品企画などの新事業に加えて、アパレル以外への横展開も進めたい。
WWD:自社サービスの強みは?
渡辺:われわれは人の感覚を科学的に解明する感性工学という学問を重視し、加えてパーソナル化を取り入れている。また、企業実績が増えたことで、データを活用したAIの精度が確実に上がっている。
WWD:岡本卓・千葉大学准教授を招へいし、人工知能研究所を設立するなど、研究に注力していることも特徴と感じる。
渡辺:当社では社員の半数近くが研究メンバーだ。ビジネスを広げる一方で、研究は欠かせない部分。いいAIを開発し、そのAIを活用したビジネスの構築については外部企業との提携も視野に、事業拡大をしていく。
WWD:AIの学習には、どのようなデータを使っているのか。
渡辺:アプリを用いた顧客データはもちろんのこと、天候データや商圏データなどのパブリックなデータ、企業が持つ購買データを掛け合わせることで独自サービスを生み出している。
WWD:AIの仕組みはサービスごとに異なるのか?
渡辺:大きな枠組みは同じAIだが、どういうデータを使うか、どういう出力にするか、といったカスタマイズを行っている。AIの開発についてもメーンはディープラーニングを用いながら、さまざまなアルゴリズムを組み合わせている。
WWD:アパレル企業におけるAIの現状をどう見るか。
渡辺:認知はここ1年くらいで大きく広がったと思う。当社としても複数の大手アパレルに導入をいただいているし、他企業のサービスも含めると、大手アパレル企業は実はほとんどが何かしらのAIサービスに触れていることになる。できること、できないことへの理解も進んでいるし、データを貯めなければいけないと考える企業は確実に増えている。
WWD:アパレル企業への導入が増えた背景をどう考えるか。
渡辺:当社としては事例が増えたことが大きい。企業としても大きなコストがかかることなので、成果がわからないよりは、導入のハードルが下がっているだろう。以前は中小企業ではデータや基盤となるシステムがそろわずお断りせざるを得ないケースもあったが、最近では精度が上がったことで、さまざまな提案ができるようになった。
WWD:今後、センシーとしては、どういった世界を目指すのか。
渡辺:“一人一台のAI”という世界を目指す。そうして顧客の感性を理解したパーソナルなAIを集めた仮想マーケットを作りたい。このマーケットを活用すれば、顧客へのコストをかけることなく最新のトレンド分析などができ、消費者とアパレルのミスマッチを減らすことができる。よりよりモノ作りに向けたスマートな社会を作れるはずだ。
WWD:それはどれくらい先の構想か。
渡辺:それほど遠くない未来だろう。当社はすでにアパレル以外も含めて30社以上、数千万人単位のデータを持っている。今後はデータをつなぎ、洗練していくフェーズに入る計画だ。