ネットフリックス(NETFLIX)のリアリティーショー「テラスハウス アロハステート(TERRACE HOUSE ALOHA STATE)」でブレイクしたローレン・サイ(Lauren Tsai)が、めざましい活躍を見せている。各雑誌やブランドから引っ張りだこなモデルとしてだけでなく、イラストレーターとしても「スターバックス(STAR BUCKS)」やマーベル(MARVEL)と協業し、直近では「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」とのコラボコレクションを10月12日に発売したばかりだ。
「マーク ジェイコブス」とのコラボのためにニューヨークを訪れていたローレンは、「ヘルムート ラング(HELMUT LANG)」のブラックのトップスにグリーンのスタジアムジャケット、チェックのミニスカートに「マーク ジェイコブス」のナイロンバッグ、「ナイキ(NIKE)」のスニーカーというスクールガールっぽいスタイリングで、意外にも1人でインタビューにやってきた。
アメリカ・マサチューセッツ州生まれのローレンは幼少期をニューイングランドとハワイで過ごし、大学へ行くよりも「テラスハウス」のオーディションを受けることを選択して東京へ飛んだ。「テラスハウス」卒業後はハワイから東京に拠点を移している。ローレンは「ナイキ」のメーンインフルエンサーの1人でもあるが、「ナイキ」が初めてインスタでローレンを発見した時には5000ほどだったというフォロワーも、今や51万1000を抱える。モデル、インフルエンサー、イラストレーター、そしてリアリティースターとさまざまな顔を持つローレンは、20歳の今、何を思うのか?米「WWD」とこれまでの活動を振り返った。
WWD:「テラスハウス アロハステート」卒業から約1年経ったが、この1年をどう振り返る?
ローレン・サイ(以下、ローレン):昨年は、自分が何者で何をしたいのかを深く考えた年だった。インスタグラムのプロフィールには、モデルでイラストレーターとあるけど、自分の目標と自分にできると思うことを達成するために、自分を制限することをやめたの。生まれた場所やお金をどれだけ持っているかによってこの考えを分かってくれない人もたくさんいるから、こういう立場を築くことができたのはとてもラッキーだったと思う。
WWD:「テラスハウス アロハステート」で学んだことは?
ローレン:「テラスハウス アロハステート」の放送後、私のことをあれこれ言ったり、好きになってくれる人もいれば嫌う人もいた。番組はごく自然にスローペースで進むから、出演者のことをすごく知っているように感じるのだと思う。番組の中で起きることに視聴者も参加できるというのは、この番組の良さでもある。オンラインのバッシングはグサっときたし、すごく私に強く当たってきた。でもこの経験から自信をたくさん持つことができた。私が何をするにしても、批判の対象になることを自覚した。
WWD:マーベルのコミックの表紙や11月下旬に発売する自身初の作品集「It’s All For You」など、この1年でイラストレーターとしても活躍の場を増やしているが?
ローレン:スケッチブックはもしかしたら私が一番大事にしてるものかもしれないから、本当にうれしい!アートなしに私の人生は語れない。旅行に行く時、学校にいる時にもスケッチブックを持ち歩いて、楽しい時も悲しい時も絵を描いてるの。スケッチブックには私の人生全てがつまってる。
WWD:「マーク ジェイコブス」とのコラボを果たしてどう思った?
ローレン:3月に「マーク ジェイコブス」のオフィスに行って、プロダクトのアイデア出しや製作過程を見て、コラボレーションを超えて、ファッションを学ぶモチベーションが湧いた。私の作品を信じくれるブランドと働けて、私のシュルレアリスムなアートがマークの作品に採用されるなんて本当に幸せ。
WWD:デザイナーのマーク・ジェイコブス本人にも会えた?
ローレン:ニューヨーク滞在中、マークはほとんど国外にいて少ししか会えなかった。だけど「ハイプビースト(HYPEBEAST)」主催のフェス「ハイプフェスト(HYPEFEST)」で「マーク ジェイコブス」がポップアップを出していて、そこに本人もいたから話せたの。ショーが最初から最後まで素晴らしくて、ずっと鳥肌が立ってたって伝えた。シルエットやテクスチャーも含めて、彼が描くマスキュリンでフェミニンでもある世界が大好き。
WWD:自身の作風はどうやって築いた?
ローレン:最初に影響を受けたのは、中学生の時に出合ったスタジオジブリ。中学校ではどこにも居場所がないように感じていたけど、ジブリ映画のストーリーから、色使い、音楽、キャラクターまで夢中になった。自分の中の何かに火がついて、情熱を感じるものを見つけられた。これがきっかけでアートに誇りを持てるようになった。それから、ライカ(LAIKA)の映画「KUBO/クボ 二本の弦の秘密(Kubo and the Two Strings)」や「コララインとボタンの魔女(Coraline)」、ティム・バートン(Tim Burton)も。暗い雰囲気のものが好きなの。
WWD:幼少期をどう過ごしていた?
ローレン:アップルスパイスケーキやパンプキンパイ、ソリ、花々、ニューイングランド地域の風土の中で生まれ育った。土地の匂いなどは、ずっと私の中に残り続けると思う。7〜18歳の残り半分の子ども時代はハワイで過ごしたけど、まだまだ私は成長してると思ってる。来年21歳になるから、ハワイ州では正式に大人になれる。
WWD:好きなブランドは?
ローレン:「アンダーカバー(UNDERCOVER)」「コム デ ギャルソン(COMMES DES GARCONS)」「サカイ(SACAI)」 「アンブッシュ(AMBUSH)」。
WWD:アートの世界に本格的に踏み込んだことで交友関係は広がった?
ローレン:アーティストのジェームズ・ジーン(James Jean)の紹介で寺田克也さんやアーティストデュオのFriendsWithYouとも知り合った。その1人、サミュエル・アルバート・ボークソン(Samuel Albert Borkson)は本当に大好き。サム(サミュエルの愛称)は心の底から湧き出るものを世界に出すことが大切と教えてくれた人。これは私がずっとかなえたいキャリアだし、信じることを続けることは、絶対に妥協したくないポイントだから。それが私のアートを欲しいって思ってくれる人たちにとって、魅力になっていくんだと思う。
WWD:アーティストとして活動しつつ、モデルとしても活躍を続けられるコツは?
ローレン:モデルは自分の見た目を売っているわけだから、常に見た目で判断されることになる。それで傷つく人もいると思う。私は、ジャッジされることとジャッジされた結果を気にせずに自分に自信を持つことを、モデルを始めた最初の段階で学んだから、モデル業がうまくいっているのだと思う。みんなが全員私を好きになるわけないし、一緒に働きたいと思うとは限らないと自覚し続けて、それでもいいと思えることが大切。最初は、自分を完璧でクールに見せようと頑張っていたけど、今は本当の自分を見せることができている。
WWD:モデル業のマイナス面は?
ローレン:また起きてほしくないっていうシチュエーションはたくさんある。16歳の時に日本のオーディションでビキニ姿で大勢の審査員の前に立たされた時は、恥ずかしくてしゃがみこみたくなった。こういう経験を通してモデル業界についていろいろと学べたけど、業界が変わらなければいけない時代が来てほしい。
WWD:今後の予定は?
ローレン:まだ詳しくは言えないけど、TV番組や映画のために来月はロサンゼルスに行くつもり。
WWD:休む時間もないくらいいそがしいのでは?
ローレン:仕事は私のために待ってくれないし、一方で全ての仕事が必ずしも私に取って必要というわけじゃない。いろんなアーティストに、プロになってしまったらもう楽しくなくなるという話は聞くけど、私はまだその域に達してないし、達しないと思う。いつも楽しいと感じてるから。
WWD:最後に伝えておきたいことは?
ローレン:今この瞬間、そして今日を自分に正直に、自分の限界を決めずにいられたら、その1日は週に、月に、そして年になる。それが、あなたが今していることで満足するのに一番大切なこと。それが私がみんなに見せたいことだし、うまくいけば結果はついてくると思う。