VIDEO エイサップ・モブが昨年リリースした2ndアルバム「Cozy Tapes Vol. 2: Too Cozy」収録曲の「Feels So Good」
今や空前の大ブームとなっているヒップホップ。その中でも抜群の知名度と実力を誇るのが、人気ラッパーのエイサップ・ロッキー(A$AP Rocky)も所属するヒップホップクルー、エイサップ・モブ(A$AP MOB)だ。
2006年にニューヨークのハーレムで結成されたエイサップ・モブには、エイサップ・ロッキーと同じくラッパーのエイサップ・ナスト(A$AP Nast)やプレイボーイ・カルティ(Playboi Carti)から、ビートメーカー、ビデオディレクター、アーティストまでさまざまなジャンルで活躍する十数名が所属する。その中でデザイナーとして活躍しているのが、エイサップ・バリ(A$AP Bari)だ。
PHOTO BY KAZUSHI TOYOTA
1993年生まれのバリは、13歳の時に故エイサップ・ヤムズ(ASAP Yams)らと共にエイサップ・モブを結成。翌年に、今やクルーの顔でもあるエイサップ・ロッキーを加入させ、早くから彼のステージ衣装やツアーグッズをデザインするなどして才能を開花させる。そして、11年にブランド「ヴィーロン(VLONE) 」を始動。当初、一般発売されることはなかったが、「クロット(CLOT)」のエディソン・チャン(Edison Chen)=デザイナーの手助けもあって、カニエ・ウェスト(Kanye West)をはじめとしたヒップホップ界のミュージシャンたちが着用し話題となり、14年から本格的にコレクションを展開するようになった。
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「ヴィーロン」 2018年春夏パリ・メンズ・コレクション。昨年急逝したラッパーのリル・ピープもモデルとして登場した DOMINIQUE MAITRE / WWD (c) Fairchild Fashion Madia
「ヴィーロン」 2018年春夏パリ・メンズ・コレクション DOMINIQUE MAITRE / WWD (c) Fairchild Fashion Madia
「ヴィーロン」 2018年春夏パリ・メンズ・コレクション DOMINIQUE MAITRE / WWD (c) Fairchild Fashion Madia
「ヴィーロン」 2018年春夏パリ・メンズ・コレクション DOMINIQUE MAITRE / WWD (c) Fairchild Fashion Madia
「ヴィーロン」 2018年春夏パリ・メンズ・コレクション DOMINIQUE MAITRE / WWD (c) Fairchild Fashion Madia
「ヴィーロン」 2018年春夏パリ・メンズ・コレクション DOMINIQUE MAITRE / WWD (c) Fairchild Fashion Madia
「ヴィーロン」 2018年春夏パリ・メンズ・コレクション DOMINIQUE MAITRE / WWD (c) Fairchild Fashion Madia
「ヴィーロン」 2018年春夏パリ・メンズ・コレクション DOMINIQUE MAITRE / WWD (c) Fairchild Fashion Madia
「フラグメント デザイン」とのコラボポップアップの様子 PHOTO BY ATSUSHI FUSEYA(magNese)
「フラグメント デザイン」とのコラボポップアップの様子 PHOTO BY ATSUSHI FUSEYA(magNese)
「フラグメント デザイン」とのコラボポップアップの様子 PHOTO BY ATSUSHI FUSEYA(magNese)
「フラグメント デザイン」とのコラボポップアップの様子 PHOTO BY ATSUSHI FUSEYA(magNese)
「フラグメント デザイン」とのコラボポップアップの様子 PHOTO BY ATSUSHI FUSEYA(magNese)
「フラグメント デザイン」とのコラボポップアップの様子 PHOTO BY ATSUSHI FUSEYA(magNese)
「フラグメント デザイン」とのコラボポップアップの様子 PHOTO BY ATSUSHI FUSEYA(magNese)
「フラグメント デザイン」とのコラボポップアップの様子 PHOTO BY ATSUSHI FUSEYA(magNese)
立ち上げから数年ながら、活躍はめざましい。16年に20足限定で発売した「ナイキ(NIKE)」とのコラボ“エア フォース 1(エア フォース 1)”は1000万円近い価格で転売され、17年3月に銀座にオープンした藤原ヒロシの「フラグメント デザイン(FRAGMENT DESIGN)」とのコラボポップアップストアには1500人が列を成し、同年6月にはパリコレ期間中に初のショー形式でコレクションを発表した。
そんなバリが密かに来日していることをインスタグラムで知った記者が、東京観光中の彼に突撃。突然のオファーで、なおかつ日本のメディアとしては初のロングインタビューにもかかわらず、プライベートなことからブランド名の由来や、エディソン・チャンとの関係、現在のファッションシーンにおける潮流についてまで語ってくれた。
PHOTO BY KAZUSHI TOYOTA
WWD:ブランドについて聞く前に、そもそもエイサップ・モブの中で、なぜバリと名乗っている?
バリ:その名前で生まれたからさ。本名のジャバリ・シェルトン(Jabari Shelton)が由来だよ。インスタグラムとかではヤング・ロード(Young Lord)とも名乗っているけど、それは俺が一番若い“Lord(ボス)”だから。こう名乗るとみんなが怖がってくれるんだよ(笑)。
WWD:なるほど。それではブランド名の由来は?
バリ:“VLONE”は、“独り”を意味する“ALONE”の“A”を逆さまにしたもので、俺だけの“ALONE”を表現している。“LIVE ALONE, DIE ALONE(独りで生きて、独りで死ぬ)”の意味もある。それに数字の“5(V)”が好きだし、“ヴィクトリー(VICTORY)”の“V”でもあって、俺の好きなモノの多くに“V”が付いているから単純にいいなって。「ヴィーロン」は、俺の腕にある“VLONE”のタトゥーからはじまっている。若い頃に仲間と“VLONE”の文字を街でスプレーペイントしていた過去があったり、俺自身のライフスタイルなんだ。
腕の他、首にも“VLONE”のタトゥーがある PHOTO BY KAZUSHI TOYOTA
WWD:立ち上げた理由は?
バリ:もともとは(エイサップ)ロッキーだったり、メンバーのためだった。でも今じゃ世界のどこにいても、着ているキッズみんながつながれるように作っている。「ヴィーロン」を着ていれば仲間だとわかるし、話しかけられる。映画「X-MEN」のミュータントみたいなものだ。ちなみに、クリエイティブな人間はみんなミュータントみたいだなと思っている(笑)。
WWD:何人体制で動いている?エディソン・チャンとの関係は?
バリ:マネジャーのアレックス(Alex)を含めて、クリエイティブ面は4〜5人体制だ。アレックスは19歳だし、みんな若くてやる気のあるやつばかり。エディソンは友人であり、メンター的存在で、俺のOG(ヒップホップのスラングで、Original Gangstaの略。元祖、イケている、本物の意)だ。
WWD:デザインの知識はどのように身に着けた?
バリ:デザインは学ぶものじゃないと思う。クリエイティブであることは生まれながらの才能で、俺にはそれがあるんだ。
WWD:ハーレムで生まれ育ったことなど、周囲の影響が大きいように思える。
バリ:それはすごくある。ハーレムで育っていなかったら今の俺はない。ハーレムで育つと、幼い頃からあらゆるものを見るし、ブロンクス、ブルックリン、クイーンズ地区にそれぞれのスタイルがあるように、ハーレムにも昔から独自のスタイルがある。だからこそ、その中で自分のスタイルを確立しようと思っていた。
VIDEO グライムシーンの雄スケプタとは、楽曲「It Ain't Safe」を発表。フックをバリが担当している
WWD:ヒップホップという音楽もクリエイションに影響を与えている?
バリ:両親が90年代のヒップホップを聴いていたから、俺はヒップホップがある環境に生まれた。それがロックだったという子もいるだろう。「そういうところに生まれたから」という感じだ。ただヒップホップを聴いて育ったからこそ、上の世代とも今のキッズともつながれるんだと思う。
WWD:ファッションと音楽のつながりは強いと思う?
バリ:もちろんだ。音楽を聴くことでよりクリエイティブになれて、気分をブーストしてくれる。ツイてない日でも、音楽を聴くとゾーンに入れるんだ。ヒップホップにロック、ジャズ、R&B、それぞれが違う気分にしてくれる。
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「ヴィーロン」 2018年春夏パリ・メンズ・コレクションでは、ラスト5ルックを“FRIENDS-”がプリントされたデニムジャケットで締めくくった DOMINIQUE MAITRE / WWD (c) Fairchild Fashion Madia
「ヴィーロン」 2018年春夏パリ・メンズ・コレクションでは、ラスト5ルックを“FRIENDS-”がプリントされたデニムジャケットで締めくくった DOMINIQUE MAITRE / WWD (c) Fairchild Fashion Madia
「ヴィーロン」 2018年春夏パリ・メンズ・コレクションでは、ラスト5ルックを“FRIENDS-”がプリントされたデニムジャケットで締めくくった DOMINIQUE MAITRE / WWD (c) Fairchild Fashion Madia
「ヴィーロン」 2018年春夏パリ・メンズ・コレクションでは、ラスト5ルックを“FRIENDS-”がプリントされたデニムジャケットで締めくくった DOMINIQUE MAITRE / WWD (c) Fairchild Fashion Madia
「ヴィーロン」 2018年春夏パリ・メンズ・コレクションでは、ラスト5ルックを“FRIENDS-”がプリントされたデニムジャケットで締めくくった DOMINIQUE MAITRE / WWD (c) Fairchild Fashion Madia
昨年10月に東京で開催されたポップアップで限定販売された“FRIENDS-”アイテム
昨年10月に東京で開催されたポップアップで限定販売された“FRIENDS-”アイテム
昨年10月に東京で開催されたポップアップで限定販売された“FRIENDS-”アイテム
WWD:ブランド設立当初から存在するアイコニックな“FRIENDS-”の文字がプリントされたアイテムの由来は?
バリ:“FRIENDS”の後ろにマイナスがついているだろ?あれは、何かにマイナスがついていたら否定の意味になるように、「友達がいない」ことを意味している。“FRIENDS”の文字を選んだ当時、家族や身内はいたけども、自分は独りきりで友達がいないと感じていた。世界中がまるで自分の敵みたいに感じる日でも、この“FRIENDS-”を着れば、独りきりな者同士でつながれる気がするんだ。
昨年11月のポップアップの様子。場所も時間も告知ナシでオープンしたにもかかわらず、1時間足らずでファンが長い行列を作った。
WWD:SNSや、各地でゲリラオープンするポップアップに強いこだわりを感じる。
バリ:SNSやポップアップは、俺とブランドのブランディングのための重要なツールだ。店に服を置くだけでは、服に生命感や熱狂は生まれない。ポップアップをやる時は、来てくれるキッズに会ってインスパイアしたいから、俺も実際そこに行く。現場に行くことで、俺の知識や経験も広めることができるからな。いろいろな場所や国を旅しているのはそのためだ。
WWD:今や世界が注目するブランドの1つだが、注目を浴びると商業的なデザインに走るデザイナーもいる。
バリ:俺のライフスタイルはとても人間的で、間違いなんかもしでかす。でも間違えたとわかったら、それを修正する。人生ってそういうもんだろ?俺は完璧じゃないし、そうあろうとも思わない。だから、そんなことを心配してもしょうがない。ただ、プレッシャーを感じるかと言われたら、それは感じる。それに俺自身は自分のことをすごく普通の人間だと思ってるし、ごく普通に毎日を過ごしているが、俺のことを特別視する人間がいることも知っている。でも、結局はあんまり気にしないようにしているのさ。
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「ヴィーロン」の公式サイトから
「ヴィーロン」の公式サイトから
「ヴィーロン」の公式サイトから
「ヴィーロン」の公式サイトから
「ヴィーロン」の公式サイトから
WWD:アメリカの他に、日本でもウェブストアをオープンしているが、やはり東京のファッションシーンは世界的にもユニークで、ビジネスにおいて重要な市場だから?
バリ:日本は大事な市場だ。モノの価値をちゃんと認めてくれるからな。あと、日本人がアメリカで先に売っているモノをレアだと思うのと同じように、日本(アジア)で先に売ったモノがアメリカでレアになるパターンがある。それに幼い頃からNIGO(R)や高橋盾を尊敬していて、ファッションが日本を知るきっかけだった。「ナンバーナイン(NUMBER (N)INE)」や「ネイバーフッド(NEIGHBORHOOD)」はアメリカでクールになる前から着てたし、近所で最初に「ア ベイシング エイプ(R)(A BATHING APE(R))」を着たのは俺だ(笑)。
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「スコロクト」とのコラボアイテム。実際に販売するかどうかは未定だという 「スコロクト」の公式インスタグラム(@skoloct)から
「スコロクト」とのコラボアイテム。実際に販売するかどうかは未定だという エイサップ・バリの公式インスタグラム(@younglord)から
「スコロクト」とのコラボアイテム。実際に販売するかどうかは未定だという エイサップ・バリの公式インスタグラム(@younglord)から
「スコロクト」とのコラボアイテム。実際に販売するかどうかは未定だという エイサップ・バリの公式インスタグラム(@younglord)から
WWD:その中でもなぜ「スコロクト(SKOLOCT)」とコラボした?
バリ:それは「スコロクト」のファンだから。エディソンの紹介でデザイナーの中野毅に会った時、同志だと感じたんだ。ブランドも中野毅についても、エディソンが教えてくれるまで何も知らなかったんだが、NIGO(R)とも仕事をしていることなどを聞いて本物だと思ったよ。コラボできて光栄さ。
PHOTO BY KAZUSHI TOYOTA
WWD:今のストリートファッションの潮流についてはどう思う?
バリ:ラグジュアリーブランドが好きな人間はストリートに興味がないし、逆にキッズはラグジュアリーブランドに興味がないから、人気や流行りにアップダウンはあるだろう。「ヴィーロン」はそのどちらでもなくて、独自の路線。別に自分のクリエイティビティーを見せつけるためにデザインしているわけじゃなくて、服を着たみんなをインスパイアしたいからやっている。「ヴィーロン」を流行っているストリートファッションのアイテムとして着てもいいし、自分のライフスタイルに合うからと着てもいい。
WWD:ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)は、ブランドを大きくするにはコラボが大事だと言っていた。彼とは過去にもコラボしているが、今後その可能性は?
バリ:そうだな……コラボは、お互いの関係ができた後で自然に起こるものだから、その時が来たら実現すると思う。ただ、未来は日本だと感じるんだ。2019年は、日本や韓国などアジアブランドとのコラボに力を入れようと思っている。俺はいつでもパイオニアだから、誰よりも早く日本に来ようと思って今回も来日した。特に何か教えられるわけじゃないけどな。
WWD:「アディダス(ADIDAS)」とコラボするという噂を聞いたが……?
バリ:いったいどこでそんな話を聞いたんだよ!?そんなの嘘だ(笑)。
PHOTO BY KAZUSHI TOYOTA
WWD:最後に、またパリでコレクションを開くことを楽しみにしているが、その予定は?
バリ:ないな。パリでやる意味を感じないというか、パリでやること自体に中身はない。どこでやったって人が来て並ぶのを待つだけだったら、自分の中で意味のある場所や面白いと思う場所でやりたい。次にファッションショーをやるなら、日本でやりたいと思っている。
エイサップ・バリの公式インスタグラム(@younglord)から
今回日本に来て、特に目立って欲しいものはなかったけど、本当は銀座でショッピングしたものを着て撮ってほしかったよ(笑)。