ファッション

“エア ジョーダン”の生みの親が語るこれからのスニーカー 足元は発売前の最新モデル

 「ナイキ(NIKE)」のシューズデザイナー、ティンカー・ハットフィールド(Tinker Hatfield)は、13日にサンフランシスコで開催されたテクノロジーやデジタルカルチャーを発信するワイアード(WIRED)の創業25周年記念イベント「ワイアード25(Wired25)」のトークショーに出演した。

 「ナイキ」製品に創造性、機能性、ヒラメキを与えてきた彼が、これまでの仕事や今後のスニーカーの在り方などについて語った。ブランドの代名詞ともいえる“エア ジョーダン(AIR JORDAN)”シリーズを手掛けてきたカリスマデザイナーは、その足元を発売前の最新モデルでキメていた。

 ハットフィールドはこれまでも独特で斬新な方法でスニーカーに新たな側面を与えてきたが、その精神は最新モデルにも活かされている。コンセプトは、“走りたくない人のためのランニングシューズ”だ。大学で建築学を専攻し、自身もアスリートだったので運動時のパフォーマンスについて理解が深い。「例えば、体重100kg以上のアメリカンフットボールの選手を考えてみてくれ。がっしりした体格だけど、ポジションはラインバッカーだから俊足である必要はない。走るのが本業じゃないから、トレーニングでは義務的に走っているとしよう」。俊足ランナーに比べて足の遅いランナーはかかとから着地する傾向があるという。そこで、最新モデルはランニング時にかかと部分をサポートし、安定性を強化する仕様にした。「この最新モデルを着用して速く走っても問題ないが、トレーニングという意味では、ゆっくりとランニングする時にその機能が発揮される」という。

 過去にも、自由かつ合理的な考え方でヒット商品を生んできた。例えば、スニーカーのソール部分に装着したエアポケットは「ナイキ」のスニーカーを進化させた。「私はデザイナーというより、良いスニーカーを作るためのストーリーテラーなんだ。アイデアがカタチになり、スニーカーのストーリーができていく。そのほうが理解されやすいし、広まっていく。私にはこの方法が自然なやり方なんだ」。

 「ナイキ」のアイコンでもある伝説的なバスケットボールプレーヤー、マイケル・ジョーダン(Michael Jordan)とブランドの決裂を救ったのも彼の作品だった。「ナイキ」のスニーカーでケガが絶えなかったジョーダンは、「ナイキ」との関係を終わらせようと考えていたが、ハットフィールドによる“エア ジョーダン 3(AIR JORDAN 3)”のプロトタイプを試して思いとどまったという。数年後、ジョーダンの父親が「ナイキ」との提携を続けるように息子を説得したと聞いた。

 ハットフィールドは映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー2」のために未来のスニーカー“ナイキ マグ(NIKE MAG)”をデザインした。その後「ナイキ」はシューレースを自動的に締めるバッテリーを搭載した“ハイパーアダプト(HYPER ADAPT)”を発売したが、将来的にはさらに進化したスマートスニーカーを作りたいと話し、着用時の状態に合わせて機能するスニーカーを考えているという。「ナイキ」はスポーツを主軸としたブランドであるが、ヘルスケアにも貢献できるのではと提案する。バスケットボールやフットボールなどのスポーツ選手は靴紐をきつく結びがちなため、数年後に足指に支障をきたすことが多いという。「足に対してきつい靴を履いていると、血流が悪くなり、足指が変形してしまう。足が故障すれば、プロ選手としての寿命も短くなってしまう。そこでだ。運動をしていないときは自動的に靴のサイズが緩んで、血流が良くなったらどうだろう」。スニーカーに搭載されたセンサーが、運動の激しさや足の形に合わせて自動的に靴の形状を調整し、休憩時などに足を休ませるという仕組みだ。「激しいスポーツにも対応するスマートスニーカーを作るのは並大抵のことではないが、やってみたい」。

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