田中文江のウィメンズブランド「ザ・ダラス(THE DALLAS)」は19日、東京ファッション・ウイークのオフスケジュールで、渋谷の「マスタードホテル(MUSTARD HOTEL)」で2019年春夏のインスタレーションを行った。発表は真っ白な壁が特徴的なホテルの客室と廊下を使い、モデルによるプレゼンテーションと展示会を同時に行う新しい方法。ブランドの世界観を作り上げた部屋にモデルが立ち、廊下にはラックを並べた。
コレクションは“トラベル”をキーワードに、ホテルに泊まる職業とタイプの異なる3組の宿泊客を表現した。彼女たちをそれぞれ自由な旅人、建築士を目指す几帳面な女性、個性的な画家と想定し、服装や部屋での過ごし方にいたるまで細かく設定して今季の世界観を見せた。
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1つ目の部屋は、自由に旅を楽しむ無職の女の子たちが宿泊している設定。オールホワイトのゆったりとしたフリル付きのブラウスやシースルーのドレスなどを身にまとい、ベッドの上に寝そべってたわいない会話を楽しむ。ベッドには紅茶やクッキー、猫のぬいぐるみ。ピュアなイメージだけれど、少し黄色味がかった空間で「ダークな話をしている」(田中デザイナー)という。
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2つ目の部屋には、建築士を目指し、再開発真っ最中の渋谷でロングステイをする女の子。インテリな彼女は几帳面で真面目。そんな彼女が身にまとうのは、クリーンなグレージュのセットアップ風のオールインワンや、タンクトップにワイドパンツ。ジュエリーは無機質なシルバーや、有機的な曲線を描くフープ。部屋の壁には書類をきれいに貼り付けて、テレビのリモコンもきっちり並べなければ気がすまないタイプ。部屋を作業スペースにして、デスクで作業したり、ちょっと疲れてベッドに横たわって休んでいる姿を描いた。
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最後の部屋には、個性的な画家の女の子が巨大な恐竜の模型を持ち込んで絵を描いている。恐竜柄のドレスを着る彼女のそばには、映画「ジュラシック・パーク(Jurassic Park)」と「ジュラシック・ワールド(Jurassic World)」とのコラボレーションTシャツが並ぶ。置かれている恐竜の模型は、「ジュラシック・ワールド」に登場するキャラクターのラプトル・ブルーという仕掛けだった。
田中デザイナーは「コレクションを着用したモデルを見てもらいながら実際に服に触れてもらいたいと思っていた。会場の『マスタードホテル』は宿泊者の90%が外国人と聞いて、隣にどんな人が泊まるかは分からないが、想像してみるとワクワクする。それをこの発表に取り入れたかった」と語る。
その工夫の結果、展示会はブランドの過去最高の動員数を達成。来場したバイヤーやスタイリスト、メディア関係者、インフルエンサーらはモデルの写真や動画を撮影した後、ラックにかかった服に袖を通したり、触ったりして本気で買い物をするように商品を見ていた。受注もその場で行い、「たくさんオーダーしちゃった」と笑顔で帰っていく来場者の姿も。プレゼンテーションでの高揚感を展示会会場にそのまま届け、ビジネスにうまく直結させることに成功していた。