美容業界では近年、“パーソナライズ”や時短、ECなど時代の流れを受けて、IoT(モノのインターネット化)、AI(人工知能)、AR(拡張現実)などのテクノロジーの導入が盛んだ。スマートミラーはその一つで、鏡でありながら人の肌や表情のデータを収集し、情報を提示する電子機器としてビューティカウンターや家庭での使用が広がっている。
そのスマートミラーの中でも注目株となっているのがノベラ(Novera)が開発する「ノベラ(novera)」(予約価格5万9800円、定価6万9800円)だ。梶裕貴、福山潤、諏訪部順一ら人気声優を起用しており、鏡がまるでキャラクターかのように話しかけてくるとSNSを中心に話題となった。またノベラはポーラ・オルビスホールディングス(HD)から出資を受けると共に、ポーラ・オルビスHDの研究機関マルチプルインテリジェンスリサーチセンター(MIRC)との共同研究を発表し、業界でも話題の的となっている。なぜこのユニークな鏡が生まれたのか、そしてどのように美しく導いてくれるのか。遠藤国忠ノベラ代表取締役CEOに話を聞いた。
WWD:予約販売を開始したが、どんな反響があるか。
遠藤国忠ノベラ代表取締役CEO(以下、遠藤CEO):予約開始前からプロトタイプがテレビなどで紹介されて、SNSで「声優としゃべれるミラー」だと話題になった。11日に予約受け付けを開始したが、1日で200件の予約が入った。
WWD:美容アイテムとしては高価であるもかかわらず勢いがあるが。
遠藤CEO:他の高価な声優コラボ製品などご存知の方には「10万円は超えると思っていた」と声をかけてもらうが、鏡なので、毎日誰もが使ってきたものだから、価格はこれでも頑張って抑えている。価格を抑え、幅広い人に使用してもらいたいと考えている。
WWD:そもそも、「ノベラ」とはどういった製品か。
遠藤CEO:目指したのは“鏡の再発明”だ。鏡というのは毎日向き合う道具だが、自分が感じている自分と、他者から見る自分は違っていたりする。自分がコンプレックスだと感じるところも他者から見て魅力的な場合がある。今の自分の魅力を再認識してもらうために鏡を使おうと思った。また自分自身を鏡に“褒められる”ことで、どんどん前向きになってもらいたいと思っている。
WWD:鏡に“褒められる”ことがどのように美につながるのか。
遠藤CEO:“セルフコンパッション”という心理学的効果を参考にしている。他者との比較ではなく、ありのままの自分を認めて自分自身と親友のように接することで、自身の内側から育てる自信のことだ。その自信が美容に対するモチベーションを長く保たせ、自分の魅力を再発見することにもつながる。
WWD:具体的にはどのように“褒める”のか。
遠藤CEO:鏡にキャラクターを与えている。まず男性3キャラクターを用意したのだが、それぞれ癒し系、クール系などタイプが異なり、その中から好きな1キャラクターを選んでもらう。そのキャラクター=鏡と毎日向き合う中でデータを取り、「最近とても口角が上がっているね、いいことがあった?」とか、言葉のトーンやストレスなどを読み取り「何か嫌なことでもあった?疲れているね」など声をかけて会話する。
WWD:毎日必ず向き合うため、ユーザーが飽きるのも早いのでは?
遠藤CEO:例えば、天気予報が「きょうは晴れ」と毎日伝えても飽きることはない。それは事実に基づいていることで、納得できるからだ。それと同じようにデータを基に伝えることはその時点の事実に基づいているので、飽きるどころか、今日はなんて言ってもらえるのかとワクワクするかもしれない。
WWD:なぜ声優を起用したスマートミラーにしようとしたのか。
遠藤CEO:声が素晴らしいこと、また演技力によってキャラクターが本当にそこにいるかのような気持ちになってもらうためだ。毎日使用してもらうためには、誰が言うかはとても重要。また、日々学習していくので、同じキャラクターを選択しても反応は人により異なり、“自分だけのキャラクター”に育っていく。