ファッション

「ミューラル」が“毒ヘルシー”で切り開く新境地 横田ひかる、甲斐まりか、kurumiらがショーのフロントローに

 村松祐輔と関口愛弓デザイナーによる「ミューラル(MURRAL)」が、「アマゾン ファッション ウィーク東京(Amazon Fashion Week TOKYO以下、AFWT)」期間中の10月19日、東京・代官山で2019年春夏コレクションを発表した。

 ショー会場となったのは小さなギャラリー。全面ホワイトで統一された空間に、1輪のマリーゴールドをそれぞれの席に置いて来場者を歓迎した。フロントローを飾ったのは、横田ひかるやkurumi、ハンナ、甲斐まりか、山田愛奈、晶、高瀬真奈などいずれも「ミューラル」のコレクションを可憐にまとったモデルたち。フロントローの華やかさは今回の東コレでも随一だ。彼女たちの投稿でSNSの露出を獲得しながらも、昔のメゾンのサロンを思わせる親密な雰囲気の中でブランドの新境地を感じさせるコレクションを披露した。

 インスピレーション源になったのは、世紀末ウィーンの画家グスタフ・クリムト(Gustav Klimt)の「接吻」(1908年)だという。金箔を全面に用いて男女が花畑の中でキスする様子を描いたこの絵画のように、コレクションはアクセサリーや光の反射でさまざまな表情を見せる生地にゴールドが散りばめられていた。また、絵画に描かれた花畑を着想源に、積み重ねたような複雑な花の刺しゅうを施したり、生花を半透明の素材のアイテムからのぞかせていた。

 この半透明の生地は塩化ビニールにウレタンコーティングを施したもの。主にレインコートなどに使われる素材だが、あえてジャケットやノースリーブのマウンテンパーカのようなアイテムに使用し「ミューラル」流にストリートの空気感を演出してトレンドを取り入れつつ、スタイリングの中でアクセントとなっていた。

 メイクもモデルの個性に合わせてゴールドやシルバーのリップをベースにした。「接吻」で描かれている花畑の色合いを意識してパープルやグリーンといったパステルカラーをこすったようにのせ、まるでキスをした後のような唇を表現していたのも印象的だった。上から下まで流れるような、絵画のようなルックを表現したという。

 しばしば「毒っぽい」と称されることが多かった「ミューラル」だが、今回のコレクションを作るにあたりデザイナー2人は「本当に“毒”が『ミューラル』のやりたいことなのか」と考え抜いたという。考えた末に2人は、“毒”とは対極にある“ヘルシー”を組み合わせた“毒ヘルシー”をキーワードに、ブランドの代名詞でもあったフリルやラッフルなど甘い要素を一切排除した。一方で、深みのあるパープルやエメラルドや複雑な刺しゅうで“毒”っぽさを残しつつ、ゴールドや透明感のある素材で“ヘルシー”を表現した。実は会場の席に置いてあったマリーゴールドの花言葉も“健康”で、花の名もコレクションのキーカラーとしたゴールドに通じるなど、演出が細部まで行き届いている。ブランドの新たなフェミニンを追求し、“毒ヘルシー”という新境地にたどり着いた「ミューラル」の今後に注目が集まる。

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