ファッション

スタン・スミス本人に直撃 スニーカー市場から大坂なおみまでを語る

 1971年の発売以降、“世界で一番売れたスニーカー”とギネス世界記録にも認定されているアディダス(ADIDAS)の名作スニーカー“スタンスミス(STAN SMITH)”。このスニーカーの生みの親でその名の由来ともなったのが、1960〜70年代のテニス界を代表するスター選手だったスタン・スミスだ。

 そんな彼が、9月に初となる自伝本「STAN SMITH: SOME PEOPLE THINK I AM A SHOE」の敢行を記念し、10月に来日した。自伝本についてはもちろん、高騰化が進むスニーカーの転売市場について、そして同じくテニス選手として活躍する大坂なおみについてなど、いろいろと話を聞いた。

WWD:なぜこのタイミングで出版を決めたのでしょうか?

スミス:理由は3つある。1つ目は、“スタンスミス”がベストセラー商品となるまでに、クリエイションの命を吹き込んでくれた多くの人々のための書籍が作りたかったこと。2つ目は、“スタンスミス”を愛する人々の思いを、経験談や写真を交えて伝えたかったこと。そして3つ目は、自分のキャリアのハイライトを記録しておきたかったからさ。

WWD:どういった人たちに読んでほしい?やはりスニーカー好きでしょうか?

スミス:私のファンは、テニスにちなんだストーリーを楽しむかもしれない。スニーカーヘッズたちは、本に掲載されたスニーカーの歴史や何百枚にもおよぶ写真に大喜びするだろう。ファッション好きの人々は、数々のコラボスニーカーのファッション史として興味があるかもしれない。芸能好きな人たちは、ファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)ら有名人の“スタンスミス”のストーリーを気に入るかもしれないし、ヒップホップが好きな人たちは、“スタンスミス”にまつわる音楽の情報を喜ぶかもしれない。つまり、いろいろな人に読んでほしいということさ。

WWD:そもそもの“スタンスミス”の誕生経緯や秘話があれば教えてください。

スミス:“スタンスミス”はもともと、1964年にアディダス創設者アドルフ・ダスラー(Adolf Dassler)の息子であるホルスト・ダスラー(Horst Dassler)と、当時のフランスNo.1男子テニスプレーヤー、ロバート・ハイレット(Robert Haillet)が最初に開発したスニーカー“ハイレット”がベースなんだ。それからアディダスのアメリカでの認知度を上げるために、その頃のNo.1テニスプレーヤーだった私の写真とハイレットのサインを“ハイレット”にあしらい発売した。数年後に私の写真だけになり、“スタンスミス”が生まれたんだ。

WWD:象徴的なホワイトとグリーンのカラーリングの意味は?

スミス:白いテニスウエアと、緑の芝に由来するんだ。私が活躍していた1970年代は、全てのテニスプレーヤーが白いウエアを着ていて、全米オープンやウィンブルドン選手権をはじめとしたトーナメントの多くが、芝のコートで行われていたから。

WWD:シュータンには、ご自身の顔写真がプリントされていますが、変えたいと思ったことは?

スミス:口ひげのない写真が使われているから、アップデートしたいと思ったことはあるさ。でもあの写真が約50年も使われているし、みんなになじみのある顔はあの写真だから(笑)。スケートボード用の“スタンスミス”には、口ひげが落書きされているものがあって、気に入っているよ。

WWD:これまでに数え切れないほどのコラボモデルが誕生していますが、お気に入りは?

スミス:ファレルとのコラボがよかったね。おかげで、“スタンスミス”の新たな一面が生まれた。彼は、才能溢れるクリエイティブな人間で、いつも素晴らしい仕事をしてくれるんだ。

WWD:ファレルと「アディダス」のコラボスニーカーをはじめ、高騰化が進むスニーカーの転売市場についてはどう思いますか?

スミス:スニーカーがあんなに高値で取引されるなんておどろきだよ。それにどんな場所でもスニーカーをはいている人が増えたことにもおどろいている。今はフォーマルな服装でも足元はスニーカーが普通なんだ。革靴よりもはき心地がいいから仕方ないね(笑)。

新モデルを除いて、“スタンスミス”はずっと変わらず手ごろな価格のまま。この“他のスニーカーと比べて求めやすい価格”という点が長く愛されている理由の一つだと思っている。

WWD:同じアディダスファミリーのテニス選手として、大坂なおみ選手はご存知ですか?

スミス:なおみは素晴らしいよ。最初の頃は、コート上で自分自身をきちんとコントロールするのが難しかったようだが、最近は制御してスマートなプレーができるようになり、いいプレーヤーになった。今後は、「全ての試合に勝ってほしい」という周囲からの過剰な期待が生まれるだろうが、それに無理に応えようとしなければ、長く活躍できるだろう。自身の出す結果を客観的に捉え、練習に励んでほしい。彼女のさらなる成長を期待しているよ。

WWD:では、セリーナ・ウィリアムズ(Serena Williams)選手がキャットスーツの着用を禁止されたことについては?

スミス:セリーナがキャットスーツを着用したのは、産後だったからというのも理由のひとつだろうし、彼女の体のためを考えると問題はなかったと思う。ただ、個人的にキャットスーツがあまり好きではないし、通常のテニスウエアとは見ていない。

WWD:最後に、“スタンスミス”が多くの人に愛される理由はなぜだと思いますか?

スミス:シンプルではき心地がよく、価格も手が届く範囲で、ほぼどんな服装とも違和感なくマッチするし、スタイリッシュだからかな。はきこんだ感じを好む人もいれば、汚れのない真っ白でクリーンな一足を好む人もいる。これまで“スタンスミス”を購入してきた人々の思いや理由は十人十色。このインタビューを読んでいる“スタンスミス”を持っている人も、それぞれのストーリーや写真をSNSに発信してほしい。そうすることで、もう1冊出版できるかもしれないからね(笑)。

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