ブランド設立から40年を迎えたカリフォルニア発の「アグ(UGG)」が節目を記念し、国内外のさまざまなファッションブランドとコラボレーションしたクラシックブーツの発表を続けている。その一つが、“服を着るフィールドは全てアウトドア”をコンセプトに掲げる「ホワイトマウンテニアリング(WHITE MOUNTAINEERING)」だ。ブランドとして初のパリコレ挑戦となった2016-17年秋冬メンズ・コレクションで「アグ」と初コラボを果たし、2度目を17-18年秋冬メンズで、3度目を18-19年秋冬メンズのランウエイで披露した。ビーチを想起させる「アグ」と、雪山をルーツに持つ「ホワイトマウンテニアリング」。一見、両極端にも思える両社の協業について、相澤陽介「ホワイトマウンテニアリング」デザイナーに話を聞いた。
WWDジャパン(以下、WWD):「アグ」のイメージは?
相澤陽介「ホワイトマウンテニアリング」デザイナー(以下、相澤):もともと雪山用の靴として「アグ」のブーツをはいていた。また、学生時代に憧れていたサーファーもはいていて、いつも身近にあった。当時から今に至るまで、自分の目線で“ずっとはきたい”と思うブーツの1つ。これ以上にいいシープスキンのブーツを知らない。トレンドにも左右されないし、「アグ」はそういう存在だ。それにもともと自分自身が足元にボリュームのあるスタイルが好きで、ルックのデザイン画を描くときも足元からスタートするくらいだから、「アグ」のブーツは自分が一番好きなスタイルを作り出すのに最適だった。
WWD:日本では女性用ブーツのイメージが強いが?
相澤:「アグ」はもともと男性が立ち上げたブランドで、メンズとウィメンズのどちらもそろえている。どちらかと言えば、女性の支持が多いというだけ。プロダクトとしてメンズとウィメンズで同じ型がある。だからデザインする上で、「ホワイトマウンテニアリング」がメンズ中心のブランドだからというようなやりにくさや難しさはなかった。
WWD:海のイメージが強いブランドとの協業で難しかったことは?
相澤:自分が山用としてはいていたので、海というイメージは特別意識しなかった。ただカリフォルニアは、ビーチサンダルにショーツといったスタイルに代表されるように、高い利便性や合理性を求めるカルチャーがあると思う。「アグ」のブーツには、“オシャレしていなくても、はくだけでかっこいい”というイメージがあり、加えて着脱しやすく保温性が高いという利便性を兼ね備えている。この実用性の高さとデザインを両立させている点が、「ホワイトマウンテニアリング」の理想像やコンセプトと近かった。
WWD:実用性とは、具体的に?
相澤:スニーカーやブーツは基本的に紐などでホールドすることによって歩きやすくなるが、「アグ」のブーツはホールドしなくても歩きやすい。これまで他の靴ブランドとも仕事をしてきたが、紐がないのにここまでストレスフリーな靴は少なく、よく計算されている。それに、ボアなので素足ではいても問題ないだろう。
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WWD:今回のコラボレーションのイメージは?
相澤:「アグ」のブーツが持つオリジナリティーを大切にしつつ、ベースモデルの形を崩さず、18-19年秋冬メンズ・コレクショのシーズンテーマである“Climber's High”のエッセンスを反映させてアレンジした。“ブーツは一生モノ”といわれるだけあって、他の靴よりも自分の考えやシーズンテーマを投影するのに向いている。“ASCOT WM”と“RIKI WM”はサイドのステッチでアウトドア用品におけるカラフルな色の組み合わせを、“RIKI LACE TALL WM”のフリンジはカラビナをぶら下げたりロープを垂らしたランウエイショーのルックの見せ方を表現している。
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WWD:それぞれに利便性やこだわりがある?
相澤:どれも湿気に強い天然ウールを使っていて、シープスキンなのに通気性が高く、蒸れず、足元にストレスが一切ない。“ASCOT WM”のベースモデルは、自分でも出張や旅行時にも持ち運ぶほどはきやすく、日常的に愛用している。そこに「ホワイトマウンテニアリング」らしいデザインを加えたかった。“RIKI WM”は、例えばスノーボードのために雪山に行くとき、一般的なスノーブーツだと運転しづらいが、車の運転にも向いていて長時間はき続けても疲れない。ウエアに着替える時でも、簡単に脱ぎ着することができる。“RIKI LACE TALL WM”には紐があるが、ホールドしてもしなくてもはくことができる。ゆるくはいてもルーズに見えないし、締めて見せるスタイルもかっこいい。
WWD:相澤デザイナーが思う「アグ」のポテンシャルは何か?
相澤:過去と現在と未来を意識し、自分たちが可能性を秘めていることを理解してモノ作りをしているブランドだ。そしてそれぞれのシューズに、単なるファッションアイテムとしてだけではなく実用的に使われているからこそ、さまざまなブランドともコラボレーションできる奥行きを感じた。「ホワイトマウンテニアリング」はこれまでたくさんのブランドと一緒にモノ作りをしてきたが、こちらのリクエストに対して、倍以上の提案を返してくれるブランドなので、次はどんな提案をしてくれるのかと、メールをするのが楽しかったくらいだ。今後も、「アグ」の新たなスタイルを発信できる手助けができればと思う。