「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」の新作香水「ミューティニー(Mutiny)」のキャンペーンでは、ジョン・ガリアーノ(John Galliano)=クリエイティブ・ディレクターが選んだ6人の女優や歌手、モデルをキャンペーンモデル“ミューティニスト(反逆者)”としてキャンペーンモデルに起用している。
新香水の名前は英語で“反逆”や“反乱”を意味する言葉で、メゾンが築いてきた“脱構築”や“破壊”の概念を込めている。ミューティニストたちはキャンペーンで、ノンコンフォーミティー(非協調)や多様性、創造性の価値観をそれぞれ自分の言葉で語っている。
19年春夏のショーに登場したモデルのハンネ・ギャビー・オディール(Hanne Gaby Odiele)とテディー・クイリヴァン(Teddy Quinlivan)をはじめ、ラッパーのプリンセス・ノキア(Princess Nokia)、女優のサーシャ・レーン(Sasha Lane)の4人の“ミューティニスト”に独占インタビュー。現代のロールモデルである彼女たちの主張と、キャンペーンに参加した感想を聞いた。
ハンネ・ギャビー・オディール
「一般的な性別なんて、私に言わせればくだらないわ。人を箱の中に閉じ込めるだけのもの。何の意味もない。私はインターセックスとして生まれたわ。インターセックスとは女性とも男性とも区別できない特徴を持つ性に生まれたということ。孤独に、隠れるように、そのことをとても恥じて生きている人が多いわ。でも、人は何だってなりたいものになれるのよ。なりたい人に、なりたいものになれるし、着たいように服を着ていいし、何になってもいい。何かに適合するなんて、グラマラスじゃないわ」
WWD:ミューティニストに選ばれた感想は?
ハンネ・ギャビー・オディール(以下、ハンネ):私はずっと自分のことをアウトサイダーだと思ってきたわ。どこにも適応せず、自分だけはそれを受け入れなければと言い聞かせてきたの。でも、自己表現を大事にする「メゾン マルジェラ」に選んでもらい、私の個性を大切にしたいと思ったの。
WWD:撮影はいつ行った?
ハンネ:1年前に撮影したけれど、ずっとワクワクしていたからつい昨日のことのように覚えているわ。一緒に撮影したメンバーは皆個性がバラバラだけれど、共通するのは自分を持っていること。だから、私もありのままの自分でいられることができた。
WWD:ジョン・ガリアーノにはどのようなことを話した?
ハンネ:ずっと一緒に仕事をしてみたいと思っていたの。実はジョンの手掛けるコレクションを着て歩くのはこのショーが初めてだった。このショーのリハーサルの時に初めて自分の出ているキャンペーンビデオを見て、涙が出ちゃった!
WWD:香水についての感想を教えて。
ハンネ:バラやレザーの香りがして、もうこの香水をつけないでは外に出られないと思うくらいとても好き。個人的にはエッセンシャルオイルと混ぜてつけるのがオススメ。
テディー・クイリヴァン
「成長する過程で、私はいつも女性らしさに異常なほど惹かれていたの。そのためなら何だって諦める覚悟があったわ。自分に誠実に生きることのほうが友達を持つことより重要だった。とにかく気にしなかったのよ。性転換して女性になったとカミングアウトしたけど、『トランスジェンダーであることを恥ずべきことではない』と誰かが言ってくれるのを待っていられなかったの。私はトランスジェンダーの女の子や男の子のお手本になりたい。そうしないと、若い子たちは皆混乱して、怖くなって、どこにも行くところがない。本当の自分になることは、反逆(挑戦)の行為なのよ」
WWD:ミューティニストに選ばれた感想は?
テディー・クイリヴァン(以下、テディー):とても刺激的だったわ。ジョンの素晴らしいキャスティングに選ばれたことを光栄に思っている。このキャンペーンはユニークで革新的で、自分自身のアイデンティティーをよく理解し、恐れずに世の中に立ち向かっていけるような姿を発信することができたわ。
WWD:キャンペーンの撮影現場でジョン・ガリアーノとはどんなことを話した?
テディー:スタジオでジョンは「Be Yourself(あなたらしく)」と私たちにアドバイスしてくれた。香水のキャンペーンでありがちな、美しいモデルがビーチで香水ボトルを持っているような撮影じゃなくって(笑)、私たちがありのままの姿であることを重視してくれていた。キャンペーン動画には台本がなくて、本当に私たちが発した言葉を使ったのよ。
WWD:香水については?
テディー:デリシャスなの!甘さがあって、ムスクのような複雑さも感じられて、まるで記憶の香り。どこかで匂ったことがあるけれど、それはどこだったのか、いろんな記憶がよみがえるの。フェミニンでもなく、マスキュリンでもない中間的な香りで、女性も男性も楽しめと思うの。
プリンセス・ノキア
「私は、自分が望まないのに、やれと言われたことは決してやらない。私は独特の存在で、本当に自分のことが大好き。自分のアイデンティティーを楽しんでいるの。私はロックスターなのよ。情熱があるから、いつも私は困ったことになる。私は『ブランドには興味がない』なんていう女にはなりたくないの。ブランドは存在する。この世にあるものは何でもそうだけど、良いものと悪いものがあるのよ。私は世界中の女性の安全と保護と対等な権利を心から大事に考えているから、自分がフェミニストであることを誇りに思う。女性は強く、パワフルな生き物。反逆は内側から生まれるものよ」
WWD:キャンペーン動画に登場してどうだった?
プリンセス・ノキア(以下、ノキア):光栄に思っているわ。強い女性のグループの一員として参加できてうれしかった。
WWD:ジョン・ガリアーノとは長い付き合いがあるようだが?
ノキア:ジョンは父親のような存在なの。人生、恋愛、セックス、ファッション、映画とかなんでも話すし、2人のときはスペイン語で会話しているの。以前、ジョンのお気に入りのジョーン・バエズ(Joan Baez)の「Diamonds and Rust」という曲を教えてもらって、私にとっても特別な曲になったわ。
WWD:「メゾン マルジェラ」2019年春夏のショーを見ての感想は?
ノキア:神々しくてゴージャスだった。「メゾン マルジェラ」はブランド自体がアートであり、コンセプチュアルでハイファッション。他のブランドにはないユニークな魅力があるのよ。
サーシャ・レーン
「こういう風に見えなくてはいけない、こういう風に演技をしなくてはいけない、こんな風にホットで美しくて痩せていなくてはいけないというプレッシャーが常にある。でも、私はタトゥーを入れているし、ドレッドヘアよ。私にとって大事なのは、自分自身に正直で、自然でいるということ。自分という存在に強くなくてはならないし、それが自分を輝かせてくれる。そして人はそれを感じてくれる。自分の心がいい状態の時は、私は本当に大事だと思うことに戻って、エゴを排除する。そういう時が一番自由だと感じる。そういう気分が好きだし、大切にしなきゃ。自分自身を大切にすべきなのよ。単に今より良い自分になろうとするのではなくて、他とは違う自分になって」
WWD:ミューティニストに選ばれた感想は?
サーシャ・レーン(以下、サーシャ):特別な経験になったわ。自分自身をさらけ出して、解放されていくような気分だった。「メゾン マルジェラ」は私たちのパーソナリティーを尊重して、型にはまらずに個性を大事にすることを教えてくれた。特に、一緒に撮影したウィロー・スミス(Willow Smith)やプリンセス・ノキア、テディーら集まった子たちの自信に満ち溢れた姿から、パワーとエネルギーをもらった。
WWD:ジョン・ガリアーノと一緒に仕事をしてどうだった?
サーシャ:出会った瞬間、「ワオ!」って思ったの(笑)。彼についての話は今までずっと聞いていたし、一緒に仕事ができることが信じられなかった。この大きなプロジェクトに関われたことを誇りに思っている。
WWD:香水についての感想は?
サーシャ:華やかで、強い。香りの美しさにはジェンダーがないということが分かる匂いなの。