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同質化するブランドロゴ 旧「セリーヌ」ロゴデザイナーが苦言

 「セリーヌ(CELINE)」や「バーバリー(BURBERRY)」をはじめとするリブランディングを図るラグジュアリーブランドが新ロゴを披露するたびに、そのロゴに対する賛否の議論が絶えない。過去を拭い去ってミニマルなフォントを採用するのは、果たしてリブランディング成功への道筋と言えるのだろうか。

 「今、99%のファッションブランドのロゴは白い背景にブラックの書体だ」。グラフィックデザインを専門とするマランゴーニ学院(Istituto Marangoni)のグレゴリオ・ポゲッティ(Gregorio Poggetti)教授は、「セリーヌ」と「バーバリー」などの新ロゴについてこう語る。両ブランドともクリーンでシンプルで、文字の線の端につけられる強調線や飾りなどのセリフがないサンセリフ(sans-serif)のボールド体を採用した。

 2005年にフィービー・ファイロ(Phoebe Philo)時代の「セリーヌ」のロゴをデザインしたグラフィックデザイナー、ハンネス・ファミラ(Hannes Famira)は「こうしたリブランディングの指揮をとるデザイナーたちは、書体デザイナーという職業があることを知っているのかどうかさえ疑問だ」と苦言を呈する。特にアクセントを消し、文字間などを微調整したエディ・スリマン(Hedi Slimane)による新ロゴに関しては「新『セリーヌ』ロゴは現代化したというより、同質化したと感じている。このブランドは“洗練”という名のバトンを突き返して、新ロゴを思いのままに推し進めている」と批判する。

 さらに、クリーンでモダンなフォント一辺倒になることで、ラグジュアリーブランドのロゴが均質化するのではないかという多くのタイポグラファーたちの危惧にも言及し、「新『セリーヌ』ロゴは“既製品”。ブランドはお互いを監視し合い、ご近所さんがやっていることはなんでも真似したがる。今と次に来るものを常に気にしているこの業界だからこそ、こういう現象が起き始めている」と注意を喚起する。

 ミレニアル世代から多くの支持を集めるコスメブランド「グロシエ(GLOSSIER)」のロゴをデザインしたイラストレーターでアートディレクターのレスリー・デイヴィッド(Leslie David)も「サンセリフとサンパーソナリティー(パーソナリティーがない)ロゴであふれる世界になってほしくない。われわれの趣味や嗜好はますます均質化しているが、そのうちすぐにこの社会と嗜好の同一性に飽き飽きしてくるはずだ。アボカドトーストが一時期流行って世界を夢中にさせた時みたいにね」と語る。

 しかしながら、「セリフのあるフォントは紙面で読みやすいが、サンセリフはウェブ、特にモバイルデバイスで読みやすいフォント」とポゲッティ教授が語るように、デスクトップからモバイル、商品パッケージ、インスタグラムまで消費者がブランドに触れるタッチポイントが増えている今、さまざまなメディアを横断できるミニマルなブランディングは実用的でもある。

 「グロシエ」のロゴをデザインしたデイヴィッドも「ブランドはデジタルマーケティング界を受け入れなければならず、デジタルにおいてロゴは実用的かつ効果的でないといけない。だからこそ『グロシエ』のような新ブランドは最初からサンセリフのロゴを作り、『バーバリー』のような歴史あるブランドはクラシックで美しいロゴをデジタルフレンドリーなものに変えたんだ」と、デジタルにおけるロゴの実用性を強調する。

 デジタルコンサルティング企業ペンタグラム(PENTAGRAM)のジャック・ルウェリン(Jack Llewellyn)=シニアデザイナーは「ブランドはSNS上のアイコンのように分かりやすいものでなければならないが、これはロゴが装飾的であればあるほど難しくなる。だからモバイルのスクリーンでも、街中の掲示板でも同じように美しく見えるシンプルな書体の方が実用的で汎用性が高い」と話す。

 またポゲッティ教授は、特にミレニアル世代を熱狂させるストリートブランドが採用しているタイポグラフィーにロゴを近づけることによって、ラグジュアリーブランドもその熱狂を取り込むことができると見ている。「『シュプリーム(SUPREME)』『オフ-ホワイト c/o ヴァージル・アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)』『フッド バイ エア(HOOD BY AIR)』などのブランドは、以前からミニマルなタイポグラフィーをブランディングの一部として採用してきたが、ラグジュアリーブランドもこのハイプ(熱狂)とストリートウエア市場のポテンシャルに入り込みたいのだろう」と語る。

 こうした実用的な理由もそうだが、ブランドがロゴを変更する最大の理由はやはりリブランディングだ。新ロゴに賛成でも反対でも、人々の注目を集めて話題になる、一つのマーケティングツールだ。バズが支配するSNSで、新クリエイティブ・ディレクターのデビューを印象づけるには特に効果的だろう。

 だからこそ、リカルド・ティッシ(Riccardo Tisci)による新生「バーバリー」は、有名グラフィックデザイナーのピーター・サヴィル(Peter Saville)とのメールのやり取りとともに新ロゴをインスタグラムで公開し、エディによる新生「セリーヌ」も、「タイポグラフィー自体は30年代から使用されているもの」という背景の説明と共に新ロゴをインスタグラムで披露した。「セリーヌ」はフィービーのファンから猛烈な批判を浴びたが、クリックや「いいね!」と共に高いエンゲージメントを獲得したのも事実だ。

 「変化は注目を集める。ブランドは注目を集めるために世間をあっと言わせなければならない。リブランディングにおいて過去を拒絶することは、非常に効果的だ」と、ルウェリン=シニアデザイナーは結論づける。

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