日々メディアをにぎわせているZOZO(旧スタートトゥデイ)によるプライベートブランド(PB)「ゾゾ」だが、2018年7〜9月期での売り上げは15億円の目標に対して5億4000万円。ビジネススーツの発送遅延などにより、大幅に目標を下回っている。しかし、今期200億円という売り上げ目標は据え置きで、2年目にグローバルで売上高800億円、3年目には2000億円を目指す壮大なブランド構想を掲げている。
決算発表翌日には「WEAR(ウェア)」を通じて「ゾゾ」を着こなす公認ユーザーの募集を開始。年間のスポンサーシップ契約により、対象者それぞれに年間24万円分の服を無償提供すると発表した。
これを聞いて、ふと「ゾゾ」には“世界観”が足りないのではないかと感じた。「ゾゾ」はサイズの悩みに応えるためにロジカルな洋服を作り、低価格で販売、コーディネートを見せることで着回し提案をするわけだが、「ゾゾタウン」に集まるファッション感度の高いユーザーが求めているのは「オシャレ」「着たい」というエモーショナルな購買体験であって、いくら低価格でベーシックなアイテムを提案されても、コンスタントにほしいというモチベーションにはならないのではないだろうか。そもそも、全員違うサイズが届くのだから、「ゾゾ」公認ユーザーのコーディネートは役に立つのだろうか。
近しいビジネスモデルを取り入れている国内外のD2C(Direct to Consumer)ブランドでも、例えば、メンズファッション専門EC「ミスターポーター(MR PORTER)」が17年にスタートしたプライベートレーベル「ミスターP(MR P)」では、ベーシックなアイテムの他にトレンドに特化したカプセルコレクションを用意。ベーシックながらも“自社サイトで扱うブランドとコーディネートできるアイテム”というわかりやすいテーマを打ち出している。
「ゾゾ」が打ち出した“サイズレスでぴったりなアイテム”という概念は画期的なアイデアだが、それは単なる生産背景であって、消費者の感情に深く働きかけるものではない。しかも半年でかなりの型数を立て続けに販売しているため、とにかくまずは商品をそろえたという感も否めない。2000億円ブランドに向かって「ゾゾ」が今後どのような世界観を打ち出すのか、その手法に注目したい。