ジョージア(旧グルジア)政府観光局がスポンサーを務めるトビリシ・ファッション・ウイークが10月18〜21日に開催された。メーン会場となったグヴィニス・ウバニ(Ghvinis Ubani)は街の中心地に位置する、イベント会場、レストラン、ナイトクラブが併設された建物。4日間で18のブランドがショーやプレゼンテーションを行い、同会場内にショールームも設けられた。
トビリシ・ファッション・ウイークの発起人であるタコ・チャキーゼ(Tako Chkheidze)は「ジョージアのクリエイティブな才能を発信するために7年前に立ち上げた。年々注目を集めているため、今季はウクライナやロシアのデザイナーも参加した。20年近いベテランから今季がデビューとなる新人デザイナーまで、ジョージアの新たな魅力を発見してもらいたい」と語っていた。
トビリシ・ファッション・ウイークに参加したデザイナーに取材をすると、多くがエココンシャスで、環境や自然をテーマに掲げるデザイナーだった。「ヴェトモン(VETEMENTS)」のようなストリートスタイルや奇抜さはなく、華やかでフェミニンなリアルクローズが大半を占める。全ブランドの中から、現地メディアやインターナショナルゲストから特に評価の高かったブランドを2つ紹介する。
「ラシャ・デブダリアニ(LASHA DEVDARIANI)」
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トビリシ美術大学(Tbilisi State Academy of Arts)でファッションデザインを学び、その後ジョージア映画大学(Theater and Georgia State Film University)で衣装制作を学んだデザイナーのラシャ・デブダリアニ(Lasha Devdariani)が3年前に立ち上げたブランド。中国のシルクのビンテージ生地にウズベキスタンの刺しゅうを施した羽織、インドとロシアで見つけたビンテージ生地を継ぎはぎしたドレスなど、洋服で異文化をコラージュする。素材は、旅先で見つけた生地や知人から買い取ったものだという。古くからシルクロードの要衝として西洋と東洋の文化が融合した、ジョージアそのものを洋服で表現しているようだ。昨年5月には原宿と表参道のアートギャラリー、ロケット(Rocket)でポップアップを開催したそう。卸価格で200〜300ドル(約2万2000 〜3万3000円)で、ロシアとヨーロッパの小規模なブティックとすでに取引があり、デザイナーは映画の衣装制作も行っている。
「コルサヴァ(KORSAVA)」
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今年4月にトビリシで開催された、若手デザイナーを支援するニュー・タレント・コンペティションでグランプリに輝いた「コルサヴァ(KORSAVA)」。デザイナーのタティナ・コルサヴァ(Tatina Korsava)は、トビリシ美術大学で4年間ファッションデザインを学び、今年卒業したばかりの24歳。正式なデビューコレクションとなる今季は、レインコートの素材を用いたジャンプスーツやトレンチコートでメンズウエアを展開した。「大気汚染や酸性雨等の環境問題が発生するジョージアの現状を、ワークウエアで表現した」とコレクションについて語った。現在、制作は全て一人で行っており、手が回らずホールセールの準備は進んでいないそうだ。今後もトビリシを拠点に、国の変化や文化をメンズウエアで表現していくという。
ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける