10月の1週目、紙面特集のためにソウルへ2泊3日で弾丸取材に行きました。3月にも特集の取材で来たので、約半年ぶりのソウル。日本での台風一過の晴天からはうって変わって、ソウルはどんよりした天気が続き、夜がとにかく寒かったことだけが記憶に残っています。
11月5日号の特集では「韓国アパレル企業に学ぶ最先端のビジネスモデル」と銘打ち、韓国企業が生み出したさまざまなビジネスアイデアをまとめました。ウェブでも韓国発コーディネート投稿アプリ「スタイルシェア(STYLE SHARE)」や 「ジェントルモンスター(GENTLE MONSTER)」「タンバリンズ(TAMBURINS)」など、いくつかの事例をご紹介してきました。今回はその取材の裏側というか、記事にはならなかった現地での気付きをいくつかご紹介しようと思うのです。
まず、ソウルで驚くべきは街の移り変わりがとにかく早いということです。たった半年しか経っていないにも関わらず、いたるところで再開発が行われていて、以前はなかった巨大商業施設ができていたり、ライフスタイルホテルが急に増えていたり、セレクトショップや本屋がいくつも移転していたり。日本でも渋谷を筆頭にさまざまな街の再開発が進んでいますが、それに匹敵する、むしろそれ以上の規模感で街が変わっている印象を受けました。今年5月にソウルの中心街に現れたデイヴィッド・チッパーフィールド(David Chipperfield)設計による化粧品大手・アモーレパシフィックの本社に立ち寄りましたが、ここはほとんど商業施設かと思うくらいの広さで、地下にはレストランフロアもありました。これが一企業のビルだというから驚きです。
街中で気が付くのは、やはりキャッシュレスに代表されるテクノロジーの普及でしょう。韓国といえば世界トップレベルのキャッシュレス超先進国。そのキャッシュレス決済率は90%を超えます。実際、個人経営のパン屋へ行っても「クレジットを持っているならクレジットにしてほしい」と言われたり、友人とのご飯で自分の分を現金で渡そうとしたら「財布持っていないからいらないよ」と断られたり。韓国ではネットバンクが普及しているので、スマホで割り勘分の送金もできるし、フリマですらスマホ決済しか使えないこともあるそうで、大きい金額はクレジットカードで、少額には決済アプリを使うみたいな使い分けをしているそうです。あと、些細なことですが、地下鉄に乗っていると高齢者でもみなスマホを握りしめ、動画を見ていたり。この国のテクノロジーの普及率はやはりすごいなあと実感をするのでした。
もちろん現地企業の取材もしてきたのですが、韓国企業の特徴というか、国民性みたいなものをとても感じたのです。まず、取材だというのに、こちらのことをすごく聞いてくる。前半取材をしていたのに、後半はお互いの国についての意見交換会みたいになる。もちろんとても有益な情報を得られるのですが、機会を逃さまいとする積極性を感じました。
そんなわけで、特集が完成したわけですが、とてもぴったりなタイミングで韓国のトレンドやビジネスに関してのセミナーがあるということで、僭越ながら僕も登壇をさせていただきました。来場いただいたのはアパレル、コスメ企業はもちろん、IT企業や韓国の企業など、なんと総計100人以上。色んな方と話をしていて、一番多かった質問は「結局韓流ブームは続くのか」というものでした。
たしかに、これについては、明確な答えがありません。韓国商材を扱う国内のEC事業者は「ブームからカテゴリーへと変化したい」と言いますし、日本へ進出したばかりの韓国アパレル企業 は「日本で定着するのは簡単ではない。人数が少ないこともあり、苦労している」と話していました。一方で、「韓国ブームは10代が中心だと思われがちだが、30代未婚女性にとっては、好きなコスメや洋服、エステを手軽に体験できる、日本でのストレスから逃れられる場所になっている」という意見を聞いて、提案次第でいろんな切り口があるんだと感じました。
イベントを経て、まだまだ韓国コンテンツはとどまることを知らないと確信しました。まずはわれわれメディアが“韓流サードウエーブ”を単なるブームとして消化することなく、 その奥にあるビジネスモデルや背景までを伝えることで、カテゴリーとしての普及のための一助になれるのではないかと思うのです。