ファストファッションブランドとして知られ、世界61カ国・地域で販売し、2兆円を超える売上高を誇る「H&M」。低価格商品を大量に売る側面ばかりがフォーカスされがちだが、実は、サステイナビリティ(持続可能性)活動の先進的企業でもある。北欧企業ということもあり、古着回収活動やオーガニックコットンの活用推進、全ての物流ルートを記録・見直すことによる二酸化炭素排出抑制、工場の労働環境改善と人権の尊重などにも取り組んできた。
そんな「H&M」のサステイナビリティ活動の根幹をなす理念が、「CLOSE THE LOOP」だ。直訳すると「ループを閉じる」ということで、「人々が着なくなったファッションアイテムを単なる廃棄物とはせず、リサイクルすることによって、新たなファッションに生まれ変わらせよう」という取り組みを進めている。これにより、衣類の焼却や埋め立てなどを防いだり、資源の節約につなげている。
2013年からスタートした古着回収活動では、他社製品も含め、2万5000トン以上の衣類を回収。リサイクルパートナーのアイコレクト(I:COLLECT、繊維リサイクルの世界的なリーディングカンパニーSOEXのグループ会社)に渡され、4つの方法(リ・ウエア、リユース、リサイクル、エネルギー)で「ビンテージ古着」「(雑巾などの)新製品」「(座席などの)詰め物や断熱材」「(運送用などの)エネルギー」として活用してきた。
最近では空き瓶などの使用済みのガラス製品による「リサイクルガラズビーズ」を施したウエアや、ファッション企業として初めて、リサイクルデニムを裁断して樹脂と混ぜてタイル化した「デニマイト」を製品化するなど、革新的な素材開発も行われている。サステイナブル素材を用いて付加価値を付けて販売する「コンシャス・コレクション」のラインも充実しており、今春はルーブル美術館に併設する、ルーブル宮殿内のパリ装飾芸術美術館と協業したラインも現在販売中だ。
さらに、4月18日から1週間、世界を上げて「ワールド・リサイクル・ウィーク(WORLD RECYCLE WEEK)」を開催する。不要な衣類を持ち込むと、500円分のクーポンをもらえるというおまけつきだ(「H&M」店舗で3000円以上買うと利用可能)。告知のため4月11日には、スタリストの渕上優樹が率いるローズチャリティ・アートエキシビション(ROSES Charity Art Exhibition)と、モデルのエミ・レナータとカロリナが運営するブリッジ・ファンドレイジング・プロジェクト(BRIDGE FUNDRAISING PROJECT、人道支援、教育、女性への援助とエンパワーメントといった慈善活動のための資金募集を目的とした団体)をパートナーにイベントを開催。手持ちの不要衣料とインフルエンサーから提供されたウエアとのチャリティー物々交換や、クーポン券との引き換えなどを実施。収益金はセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンに寄附し、東北の子どもたちの支援に充てる。近日中には、H&Mジャパンが日本企画で初めて制作したスペシャルムービーも公開予定だ。
「もったいない」が意識として根付き、ものを大切にしたり、布を裂いて作った裂け布や刺し子などで補強したり新しい製品に生まれ変わらせることを古くから行ってきた日本は、世界の「H&M」でも古着回収量ナンバーワンだという。断捨離を兼ねながら、着なくなった衣料を整理する良い機会としても活用したい。