ステラ・マッカートニー(Stella McCartney)の2017年12月期(英国およびライセンス事業)の売上高は前期比2.1%増の4250万ポンド(約61億円)、純利益は1.5%増の710万ポンド(約10億円)と緩やかな成長を見せた。
フレデリック・ルコフ(Frederick Lukoff)=ステラ・マッカートニー最高経営責任者(CEO)は、「17年の成長は16年よりも緩やかだったが、16年はブレグジットを問う国民投票の影響でポンドが弱くなり、売り上げはその恩恵を受けた。また、公表されている17年の数字は事業の一部にすぎない」とコメントした。
3月末でケリング(KERING)から離れ、法的にも19年3月28日には完全に独立する「ステラ マッカートニー」だが、事業は計画通りに進んでいて順調だ。17年の売り上げは、再生可能な資源から作られたラバーソールが特徴の新しく発売されたスニーカー“エクリプス”シリーズや、既製服、ハンドバッグ、キッズ用品などによる。また16年末にスタートしたメンズウエアも評判がよく、特に日本で好調だという。
同社は出店にも積極的で、17年はパリ、ニューヨーク、フィレンツェ、ロサンゼルスのサウスコートプラザに出店した他、ドバイのショッピングモールの店を増床した。この勢いは18年も続き、ロンドンのオールド・ボンド・ストリートに旗艦店をオープンしたことに加え、マカオとシンガポールに出店し、中国とラスベガスに合計4つのアウトレットをオープン。ほとんどの店舗が直営店だ。キッズ用品事業も好調で、アジアでは独立した店もオープンしているが、欧米にも出店する計画だという。ルコフCEOは「キッズ用品事業は毎年大幅に成長しており、採算が取れるようになった」と述べ、今後数カ月の間に中国でさらに出店する予定だと続けた。
環境損益計算書(EP&L: Environmental Profit and Loss)においても、「ステラ マッカートニー」は好調だ。前述の通り、売上高が前期比2.1%増であるにもかかわらず、環境への影響度は同8%減の738万ユーロ(約9億4460万円)となった。
同社によれば、環境負荷の多くは原材料や素材の生産段階でかかっているが、17年はそれが前年比で18%減になったという。これは主に、ヤギの過剰放牧や草地の砂漠化を招く“高負荷素材”であるバージン・カシミヤの使用を廃止したことによる。「カシミヤのセーターを作るには5頭のヤギが必要だが、ウールなら1頭のヒツジから5枚のセーターを作ることができる。環境にとって、ヤギはヒツジよりはるかに負荷が高い。カシミヤの廃棄物を再定義することで、負荷を飛躍的に減らすことができた」とルコフCEOは語る。
また同社は、従来の真鍮製のチェーンから、鉱石の製錬段階でより環境負荷の低い鉄やアルミニウムへの移行を進めている。再生素材の使用や、過去のファブリックなどの再利用にも積極的だが、店舗、オフィス、倉庫に関連する環境負荷は、新規出店の影響もあり、前年より20%増加している。このため、さらに前向きに取り組んでいく予定だ。
なお、ケリングから独立するとはいえ、今後もEP&Lやサステイナビリティー関連のプロジェクトでは協働する予定だという。「事業にEP&Lを完全に組み込む準備を進めている」とルコフCEO。いずれ“環境負荷ゼロ”を実現できると思うかという質問には、「それを目指している。環境負荷がゼロということは、真の意味で持続可能な企業になったということで、自然に負荷をかけることなく事業を継続できる。毎年着実に努力を重ねて数値を減らしていき、いずれはゼロにしたい」と答えた。