人口約14億人の中国は、2018年6月にインターネット利用者が8億人を突破した。中国インターネット情報センター(CNNIC)によると、そのうち71%にあたる5億6000万人以上がネットショッピングを利用している。さらに、中国EC市場のおよそ4割がCtoCだという。
日本企業にとって重要な存在が、“代購”と呼ばれるソーシャルバイヤーだ。個人で商品を買い付け、ウィーチャット(WeChat)、ウェイボー(Weibo)などでフォロワーや友人に販売をする人たちのことで、中には製品の特徴や使用感を説明し、新しい商品をレコメンドして中国国内に広めるインフルエンサー的役割を果たすバイヤーもいる。“爆買い”と称される中国客の大量購入は、このソーシャルバイヤーによる買い付けも含まれている。
中国では、これらのソーシャルバイヤーに登録を義務付ける「電子商務法」が2019年1月1日に施行される。初期は登録が殺到することも見込まれ、登録までの期間が不透明だ。さらに納税義務が発生する登録に否定的なソーシャルバイヤーが代購業をやめてしまうなど、“爆買い”にも影響を及ぼす可能性が高いのだ。
世界各国のマーケティングや中国マーケティングメディアを運営するトレンドエクスプレス(トレンドExpress)は24日、ソーシャルバイヤーと企業の商談会「ソーシャルバイヤーEXPO2018 秋」を都内で開催した。会場には「DHC」「ダズショップ(DAZZSHOP)」「ピンクハウス(PINK HOUSE)」など美容やファッションの他、食品、健康食品カテゴリーの36社が出展し、1000人もの中国人バイヤーが訪れた。各企業のブースも行列のにぎわいだったが、この日一番の盛況となったのが弁護士による「電子商務法」の説明会で、セミナー会場に入りきれない人たちで溢れかえるほどだった。
会場にいたソーシャルバイヤーに「あなたはソーシャルバイヤーの登録をしますか」と尋ねると、10人中7人が登録すると答えた。30代の女性バイヤーはすでに登録手続きを済ませたといい「登録することで、ちゃんとしたバイヤーだと思ってもらえるというメリットもある」と話した。また、友人や友人の紹介による注文で化粧品を売っているという20代の女性バイヤーは「登録しない」と答えた。「普段は会社員なので、これは副業。そもそも友人からの依頼のため量が多くないから、登録は必要ない」。もし注文が増えて、さらに利益が得られるとしたら登録するか?と尋ねると「登録しなくていい範囲でしか代購しない」と即答した。
しかし、「この法律によるマイナスの影響はあまりないのでは」と森下智史「中国トレンドExpress」編集長は語る。「この法律は取り締まりではなく、『事業者としてきちんと税金を払ってください』という意味合いが大きい。そのため、副業としてやっているソーシャルバイヤーも登録すれば大きな影響はないだろう」。
そもそも、これまで個人間の代理購入であったソーシャルバイヤーがBtoCと変わらないほどに成長したこと、さらに中国国内の偽物に関する問題意識がこの法律を生んでいる。登録の混乱によって一時的に“爆買い”は減ってしまうが、長い目で見れば中国行政が個人バイヤーを認めることとなり、中国の輸出入監督管理などの関連法律を遵守するバイヤーが増えることになるという前向きなものだ。中国進出を狙う日本企業にとっても、ソーシャルバイヤーはますます目が離せない存在となりそうだ。