ファッション

仏「コーシェ」が日本産のコレクションを制作中 来日したクリステルを直撃

 パリ発の「コーシェ(KOCHE)」は2019-20年秋冬シーズンに、日本のテキスタイルメーカー、縫製工場と協業した日本産のカプセルコレクションを発表する。ファッション・ウィーク推進機構(JFWO)との協業で、愛知・尾州の中伝毛織の素材、東京・両国の江戸ヴァンスによる縫製でウエアを制作中だ。日本産のコレクションは来春の19-20年秋冬のパリ・ファッション・ウイークと東京ファッション・ウイーク期間中に披露する予定。

 10月中旬にはデザイナーのクリステル・コーシェ(Christelle Kocher)が来日し、カプセルコレクションのための商談と工場視察に訪れた。2年前にはユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)のエイチ ビューティ&ユース(H BEAUTY&YOUTH)の招へいで東京ファッション・ウイークに参加したが、2度目の東京での発表はどのようなコレクションを企画しているのか、クリステルに聞いた。

WWD:2年前に東京でファッションショーを行ったのが記憶に新しい。

クリステル・コーシェ(以下、クリステル):もう2年経ってしまったけれど、あれは私の夢がかなった瞬間だったの。ユナイテッドアローズの栗野(宏文・上級顧問)さんをはじめ、ユナイテッドアローズのみんなが「東京でショーをしたい」という願いを実現してくれた。ショーでは目に涙が浮かんで、感動で震えてしまったわ。「コーシェ」には2人の日本人のパタンナーがいるけれど、そのうちの1人は前回の東京でのショーを見て、連絡をくれたのよ。私は日本のファッションに影響を受けて来たから、日本のブランドをリスペクトしているの。

WWD:影響を受けた日本のブランドは?

クリステル:「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」など。特にファッションを学び出したときは、パターンを学ぼうと思って山本耀司やマドレーヌ・ヴィオネ(Madeleine Vionnet)、クリストバル・バレンシアガ(Cristobal Balenciaga)のドキュメンタリーや資料を見て勉強していた。そうして、文化服装学院に通いたいと思って、申し込みまでしました。結局、留学費などの問題で諦めることになって、イギリスのアートスクールと、セント・マーチン美術大学に行くことになったの。

WWD:どんな学生時代だった?

クリステル: 14歳の頃から、学校に行きながらベビーシッターや清掃員として働いたわ。学校では優等生で、数学や化学が得意だった。「ファッションを学びたい」と言ったら、「もったいない!」と言われることもあった(笑)。ファッションを学ぶため、イギリス南部のアートスクールでパターンを学んだ。ラッキーなことにそこで出会った70歳のおじいちゃん先生は、アメリカでの最初のクチュリエとして知られるチャールズ・ジェームス(Charles James)のアシスタントだったのよ。その先生からパターンの基礎を教わり、セント・マーチン美術大学に入学する際には1年生をパスし、2年生からスタートすることができたの。しかも成績優秀だったから、学費も免除されたのよ。

WWD:日本の卸先も多い。

クリステル:日本では約20店くらい。ブランドビジネスの30%くらいを占めている。

リメイクのサッカーユニホームに込めた
平和へのメッセージ

WWD:サッカーのユニホームをリメイクしたウエアが人気だ。

クリステル:サッカーをしていた父の影響もあり、ずっと大好きなスポーツ。サッカーは性別や世代、階級など、社会背景や境遇が異なってもみんなが一緒に盛り上がることができるから、とてもポジティブなものだと思う。ネイマール(Neymar)やエディンソン・カバーニ(Edinson Cavani)、キリアン・エムバペ(Kylian Mbappe)ら有名な選手らが所属するフランス・パリのサッカーチーム「パリ・サンジェルマンFC(PARIS SAINT-GERMAIN FC)」のロゴを使ったウエアを2シーズン続けていて、日本の「エディフィス」との別注企画も好評だったの。消化率は90%でほぼ売り切れたと聞いたわ。

WWD:2019年春夏のショーも、さまざまな世界の文化をミックスして、平和のメッセージを込められていた。

クリステル:世界中の女性たちと、異なる文化にオマージュを捧げるため「ユナイテッド・ハーツ・オブ・コシェ(コシェの団結心)」をテーマにした。現代を生きる女性たちはとても国際的。さまざまな背景を持つ友達に会うことができて、お互いの文化を尊重しあえることは素晴らしいことだと思う。ファッションはポジティブなメッセージを発信できるツールだから、そのさまざまな文化背景を形、柄、プリントで表現した。例えば、アフリカの民族衣装の柄、日本は刺青柄、モロッコ風のベルベット、フランスのドットにレースやコサージュなどのクチュール要素。いくつもの要素をミックスするのは、一つの文化に縛られずにオープンマインドであるべきだと感じたから。

WWD:「コーシェ」以外の仕事も多いのか?

クリステル:「コーシェ」では年間プレとメーンを合わせて4コレクションのデザインをしているけれど、他の仕事を入れると年間19コレクションくらい手掛けている。シャネル(CHANEL)傘下のメゾン ルマリエ(Maison Lemarie)では、「シャネル」のカメリア、アクセサリー、刺しゅうのデザインを担当している。他にもシークレットプロジェクトとしてデザイン面でブランドをサポートしている。

WWD:普段から「コーシェ」では日本の素材を使用しているのか?

クリステル:毎シーズン、必ず日本の素材を使っているわ。ポリエステルは牧村やエイガールズなどのものが多い。今年5月にウールマークとの協業で、尾州の工場を視察させてもらった。そこでウールやコットンを知ることができた。シルク見えするサテンもとても美しく、発見がたくさんあったわ。19年春夏でも早速、中伝毛織の生地も使用しているの。

WWD:来年3月には東京ファッション・ウイークに戻ってくる。

クリステル:とても楽しみにしている。東京ファッション・ウイークは国際的であるべきだと思うの。1980年代に日本人デザイナーたちがパリでショーを見せ、パリの人々を驚かせて、今もコレクションを発表し続けているように、他国のクリエイションを見せ合うことで、刺激を与え合うことって大切なことだと思う。前回はユナイテッドアローズの協力でショーを行ったけれど、今回は日本産地とコラボレーションして、日本産のスペシャルコレクションを制作している。東京での発表では、先にパリコレで発表する19-20年秋冬コレクションと、SEE NOW BUY NOW形式(見てすぐ買える)のサッカーユニホームを使ったクチュールピースを発表したいと思っている。ブランドのオリジナルテキスタイルに、日本の生地、古着をパッチワークして世界で1枚のピースにしたい。日本とフランスの共同の“インターナショナルチーム コーシェ”というイメージで、イレブン(11人)のモデルたちを登場させることが理想ね(笑)。

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