サステイナビリティーは、「持続可能な」という意味で企業活動においては環境に配慮したモノ作りや公平な雇用形態などを示す。これまでサステイナブルな取り組みは企業の売り上げに直接つながらないことだと考えられてきた。実際に企業のCSR(社会的責任)としてのサステイナビリティーの追求は、短期的な売り上げに繋がりにくい。
しかし、2011年頃からCSV(共通価値の創造)という環境問題を長期的に解決することで、売り上げに結びつくといった考えが浸透した。ファッション業界では、13年のバングラデシュの縫製工場が入ったビルの崩落事故をきっかけに、安全で整備された労働環境などを整えていくことが重要視されるようになった。さらに15年に国連が定めたSDGs(持続可能な開発目標)が企業価値を評価する大きな指標となっていることも、企業がサステイナビリティーの追求をすることへの後押しになっている。
実際にH&Mは「2030年に再生可能素材100%を目指す」と宣言し、「ユニクロ(UNIQLO)」などを擁するファーストリテイリングは「無駄なものを作らない、運ばない、売らない」とサステイナビリティーの追求に取り組んでいる。この分野で先駆的な取り組みを続けてきたパタゴニア(PATAGONIA)は「デニムは汚いビジネスだから」と広告を打ち、原料から製造に至るまで環境負荷が大きいといわれるデニムに警鐘を鳴らした。ファッション業界のサステイナブル動向を振り返る。
【ファッション業界の環境問題への責任】
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「ジーンズ1本の綿花栽培で飲み水10年分失う」 国連がファッション業界に警告
国際連合(以下、国連)は、「ファッションと持続可能な開発目標:国連の役割とは」と題した国際会議を3月1日にスイス・ジュネーブで開催した。経済委員会の執行官であるオルガ・アルゲェロワ(Olga Algayerova)は「ファッション業界が軌道修正する必要があることは明らか。全産業で2番目に多く水を消費しており、世界の排水量の20%を占める業界だ。ファストファッションによって生じた多くの緊急事態に対応するためには、サステイナブルな消費の促進が不可欠だ」と、ファッション業界が環境に対する緊急事態に陥っていると強調した。
米綿団体がサステイナブル宣言 遺伝子組み換えとテクノロジーの精密農業で
国際綿花評議会(COTTON COUNCIL INTERNATIONAL、以下、CCI)や全米綿花評議会(NATIONAL COTTON COUNCIL OF AMERICA)などの米国綿花の業界団体で推進する「コットンUSA(COTTON USA)」は、サステイナブルな綿花栽培を本格的にスタートする。
米リーバイスが温暖化対策に本腰 トランプ大統領が離脱表明したパリ協定に沿う
米大手ジーンズメーカー、リーバイ・ストラウス(LEVI STRAUSS以下、リーバイス)が科学に基づいた地球温暖化対策戦略をスタートする。同戦略は、2015年に定められた気候変動抑制に関する国際協定、パリ協定の目標に沿ったもので、産業革命前と比較した気温上昇を2度以下に保つことを目指す。
捨てるのは待った! ダウンは再生可能な循環資源 リサイクル拠点が拡大中
羽毛の循環社会を目指す「グリーン ダウン プロジェクト(Green Down Project)」がこのほど、ホームページをリニューアルした。日本全国に200カ所以上ある回収場所を地域別に整理することで、以前から多く声が挙がっていた「捨てようと思う羽毛製品を無駄にしたくないが、どこに持っていけばいいかわからない」という声に応え、わかりやすくした。
専門家も二分 毛皮と人工ファーはどちらがサステイナブルか? どちらも課題は山積み
毛皮の使用を廃止する“ファーフリー”を宣言するブランドが続き、行政としても米サンフランシスコ市やロサンゼルス市、ウエストハリウッド市やバークレー市は毛皮製品の販売を禁止するなど、「毛皮製品は過去のもの」といった風潮が強まっている。
【H&MやファーストリテイリングなどSPA企業の取り組み】
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H&Mが考えるサステイナビリティ 「2030年に再生可能素材100%を目指す」
・サステイナブルの業界リーダーに
・環境良化目指す「クライメット・ポジティブ」も発表
・“コンシャス”コレクションの意義とは
H&Mのサステイナビリティ責任者とクリエイティブ・アドバイザーに聞く 使命と最新コレクション秘話
・“コンシャス・エクスクルーシブ”コレクション
・漁業用網から作られたレースのドレスが今年の目玉
・小さなコレクションが大いなる研究開発の場に
いらない服が新しい服に生まれ変わる H&Mの財団が“超循環型”リサイクル技術発表
・香港繊維アパレル研究開発センターとタッグ
・熱水処理で綿とポリエステルを分離
・不要な服が新たな服へ
H&Mが買い物袋を有料化 紙製に変更して20円で
・12月5日から全国88店で紙製に順次切り替え
・一律20円課金
・余剰金は海洋プラスチックごみ汚染対策へ寄付
ファーストリテイリングがサステイナビリティの取り組みを発表
・SDGsを軸に企業価値高める
・サプライチェーン、商品、店舗・コミュニティ、従業員の4領域
・AI、ロボット、自動化、教育で工場の生産性向上と効率化も
「ユニクロ」がジーンズ加工工程の水使用量を90%削減へ
・水の使用量を最大99%、平均90%削減
・19年にはジーンズ生産量の約3分の1に導入
・20年に全ブランドに導入
「ザラ」のインディテックスが国境なき医師団に3億円寄付 シリア難民やロヒンギャ難民支援
・インディテックス10年で約30億円寄付
・インド北東部の乳幼児栄養失調対策も
・他にも年間50万着の衣服を提供
「ザラ」がデニムでサステイナブルな新コレクション 六本木のショールーミング店でアピール
・世界に先駆けて日本で販売
・オーガニックやリサイクルの綿用いて
・インフルエンサー6人がスタイリング
「ギャップ」が夏休み中の子どもたちに宿題!? ブックレットを無料配布
・洋服に使われている資源について学ぶ内容
・自然環境について考えるきっかけ
【LVMHやケリングなどのラグジュアリー企業の取り組み】
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「CO2排出量を25%削減」LVMHが環境保護目標値を上方修正
・環境部門設置25周年のイベントで宣言
・内部炭素基金への投資を倍増
・再生可能エネルギー使用量を引き上げ
LVMHや大手百貨店が環境対策を強化 フランスの消費者の意識にも変化が見られる
・LVMHも強化宣言
・ギャラリー・ラファイエットも取り組み
・20年にプラスチック製食器類使用禁止
毛皮廃止宣言の「グッチ」を擁するケリングがアパレル部門で最優秀サステイナブル企業に
・世界で最もサステイナブルな企業100社
・全部門で47位
・3度目のランクイン
「グッチ」がアンゴラの使用廃止 ファーフリーの一環で
・2018年春夏シーズンから一部のリアルファー使用廃止を決定
・アンゴラの90%が中国産
・アンゴラ不使用ブランドは330におよぶ
バーバリーがRCAと提携強化 サステイナブルな素材開発へ
・RCAと連携し独自の素材研究開発機関を創設
・サステイナブルな素材開発や、教育格差改善が目的
・バーバリーから300万ポンドの助成金
「バーバリー」が売れ残り焼却処分を禁止 毛皮も撤廃へ
・ティッシのファーストコレクションから
・売れ残り商品の処分も廃止に
・PETAや英メディアから批判を受けていた
プラダが毛皮の使用削減を明言 動物保護団体の猛抗議を受けて
・世界40の動物保護団体が一斉にプラダにメール
・「毛皮使用は全体の0.1%に満たない」と説明
・ナイロンはリサイクル糸の使用へ
プラダが産業汚染された土地を再生 東京ドーム2個分の巨大産業施設を公開
・4つのビルで構成
・素材倉庫、オフィス、講堂などを備える
・産業汚染された土地を再生
「ヴェルサーチ」もファーフリー宣言 国際毛皮連盟は反発
・雑誌「1843」のインタビューで明言
・国際毛皮連盟はロビー活動を開始
【パタゴニアなどサステイナブル先駆者に学ぶ】
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「パタゴニア」が過激なキャンペーン「デニムは汚いビジネスだから」をスタート
・新しいデニムコレクション
・合成インディゴの過剰な使用を抑える
・デニム業界を変える手助けに
パタゴニアが地球環境のためにブラックフライデーの売り上げを全額寄付
・環境保護団体に寄付
・米国で消費者が最も買い物する日に
“Yチェア”のカール・ハンセン、超ヘルシー経営で売り上げ30倍
・“価格競争では到底勝てない”
・デンマークの木材を用いてデンマークの職人が作る
・プラスチック製品と化学薬品不使用
「着る人、作る人、売る人、すべてを幸せにしたい」 「ザ・イノウエ・ブラザーズ」の挑戦
・市場価格の半額程度で高級ニットを提供
・ビジネスの仕組みから考える
・井上兄弟はデンマーク育ちの日系二世
エバーレーンが未使用プラスチック原料の使用廃止 2021年までに
・13商品の製造に300万本の廃棄プラスチック製ボトルを使用
・価格は約6100~2万2100円
・ニューヨークに啓発目的のコンセプトショップをオープン
北欧インテリア「アルテック」の新・中古ビジネスがすごい
・“無駄を出さない”という考えから生まれたアイデア
・中古品販売のためのサイトがオープン
・新品と中古品を両方ネットで買うことができる体制に
「ステラ マッカートニー」が米バイオテック企業とパートナーシップ締結 サステイナブルな素材を開発
・米国のボルトスレッズと提携
・たんぱく質を使いゼロから繊維を製造
・制作したドレスをMoMAに展示