フィービー・ファイロ(Phoebe Philo)が「セリーヌ(CELINE)」を去り、“フィービーロス”現象が起きている。フィービーはメンズウエアをベースに、実用性と女性らしさを兼ね備えた洋服を提案し、多くの大人の女性と、時には男性たちの心も捉えてこれまでになかった市場を開拓した。そして多くのブランドがそのスタイルをフォローし、その影響力は極めて大きかった。オーバーサイズでしなやかさも備えるその服は、新しいテキスタイルや加工技術に加えて色の選び方も独特で、まさにフィービーのセンスの良さが凝縮されたもの。上質で奇をてらわないがコンサバではないモダンな服――その跡をカバーできるブランドはあるのか。大のフィービーファンで「セリーヌ」を着こなす名物バイヤーたちに聞く連載第3回は、杉本春美ビームス・ウィメンズドレス統括ディレクターだ。
「フィービーが手掛けた『セリーヌ』のウエアは、ランウエイを飾るような、見て楽しむだけのものではなく、見る人のライフスタイルに溶け込むことが想像できるものだった。ウエアラブル、タイムレス、洗練――これらの表現はフィービーが生み出したファッションを表現する言葉だと思う。美しいシルエット、新素材の提案、大胆な色柄使い、華美な装飾を削ぎ落とした静かな強さ、知的な美しさが詰まった洋服に私たち女性は魅了された」と杉本統括ディレクターは語る。
「ステラ マッカートニー」は女性のライフスタイルと新素材の追求が合致
そんな杉本統括ディレクターが注目するのは「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」だ。「美しいスーチングが人気を集めている。女性デザイナーだからこそ表現できる男性性と女性性のミックスバランスがファンの心をつかんでいる。フィービー同様に、リアリティーを追求しているブランドであり、ランウエイにおいても女性のライフスタイルとの親和性が常に意識されていると思う。新素材という点でも、サステイナブル素材の開発に熱心で、新しい発見、驚きを与えてくれるブランド。ステラ自身のパーソナルな魅力も加わって女性を引きつけているのは、フィービーにも通じるところであるように思う」と語る。
大胆な色使いにドキっとする「ロエベ」
そして、色使いのセンスにフィービーとの親和性を感じるのが「ロエベ(LOEWE)」だと杉本統括ディレクターは言う。「フィービー同様に、大胆な色柄使いにドキッとさせられるブランド。その色使いのセンスが抜群に素晴らしいと思う。洗練されたミニマルな表情も持ち、成熟した大人の女性だから楽しめるドラマチックな表現がフィービーファンにも届くのではないかと感じる。知的でありながら、大人の女性が共感できるユーモアもあわせ持ったブランドってなかなかないから」。