「ディオール(DIOR)」は11月30日、東京・青梅のテレコムセンターで2019年プレ・フォールのメンズ・コレクションを発表した。親日家のキム・ジョーンズ(Kim Jones)=メンズ アーティスティック・ディレクターは、メゾン史上初となるメンズのプレ・コレクションのランウエイショーを東京で開催したのみならず、アーティストの空山基(そらやま・はじめ)とのコラボレーションや桜吹雪のモチーフ、ランドセルにインスピレーションを得たバッグなど、日本のモチーフを随所に散りばめた。なぜキムは、これほどまでに日本に魅了されるのか?その理由を聞いた。
WWD:キムが日本好きなのは知っているが、メゾン史上初のランウエイショーを東京で開催したのは、それが理由?
キム・ジョーンズ(以下、キム):もちろん僕も日本が大好きだけれど、メゾンの創業者ムッシュー・ディオールも日本を深く愛していたんだ。過去のコレクションからは、彼が日本を愛していたことがうかがえる。日本向けのスペシャル・ラインを作っていたこともあるんだよ。ムッシューの日本への想いに敬意を表しながら、「ディオール」の過去と現在を組み合わせて見せるという意味で、この国で開催するのが一番だと思ったんだ。
WWD:ムッシュー同様、そこまでキムが魅了される日本の魅力ってなに?
キム:君も周りを見ればわかるよ!素晴らしく近代的なビルと、歴史的な文化が共存している。デザイナーとしては素材や職人技、技術力も魅力的。そして、常に新しいブランドが生まれている。道ですれ違った人の洋服や、ちょっと見かけた新しいテクノロジーなど、全てがインスピレーションの源だ。
WWD:今回のコレクションにも、そんなインスピレーション源を盛り込んだ?
キム:もちろん。そこにムッシューの日本への愛情も盛り込んだ。50年代の作品と思われる、彼のスケッチ画から得たインスピレーションとかね。今は「盗用」などにまつわる議論が活発な時代だけれど、ムッシューは心の底から日本の文化を賞賛していたし、僕も同じ。本当に美しい国に影響を受けたことを表現するのは、素晴らしいことだ。
WWD:具体的には?
キム:コラボレーションした“ソラヤマさん”(=空山基)の作品は、プリントしたり、素材にメタリックプリントを加えたり。桜吹雪と組み合わせたりもしている。“日本のスクールバッグ”(=ランドセル)みたいなバッグもあるよ(笑)。他に使った柄は、ムッシュー・ディオールが生前最後に手にしたと言われているネクタイの柄。日本の絹で作られていたんだ。
WWD:空山基は、どこで知ったの?
キム:昔から知っていた。すごく未来的なアーティストだと思う。1970年代からすでに先進的だったみたいだ。今回はショーのために銅像を作ってくれたんだけど、力強い女性のようで気に入っている。ムッシューもタフな女性が好きだったから。今回、一緒に仕事をして、そのスピード感に驚いたよ。
WWD:ショーの前から、カプセル・コレクションの発売やサイン会などで大忙しだった。
キム:顧客を満足させることが一番。今の消費者は、いろんなものに興味を持っているから、同時進行でいろんなことをやるしかない。大変だけれど、いつもこんな感じかな。もう来年春に発表するコレクションのコラボレーションだって準備万端なんだよ(笑)。