フィービー・ファイロ(Phoebe Philo)が「セリーヌ(CELINE)」を去り、“フィービーロス”現象が起きている。フィービーはメンズウエアをベースに、実用性と女性らしさを兼ね備えた洋服を提案し、多くの大人の女性と、時には男性たちの心も捉えてこれまでになかった市場を開拓した。そして多くのブランドがそのスタイルをフォローし、その影響力は極めて大きかった。オーバーサイズでしなやかさも備えるその服は、新しいテキスタイルや加工技術に加えて色の選び方も独特で、まさにフィービーのセンスの良さが凝縮されたもの。上質で奇をてらわないがコンサバではないモダンな服――その跡をカバーできるブランドはあるのか。大のフィービーファンで「セリーヌ」を着こなす名物バイヤーたちに聞く連載第4回(最終回)は、根岸由香里ロンハーマン事業部長兼ウィメンズ・ディレクターだ。
「よくよく考えると、そもそもフィービーの存在は特殊。ブランドのデザイナー交代劇はたくさん見てきたが、ファッション関係者のみならず世界中の一般消費者がSNSなどで話題にし、インスタグラムでは @oldceline というフィービー時代の「セリーヌ」のアカウントができてすでに15.4万人のフォロワーを抱えるなど、今までにはない現象が起きている」とファイロの存在の特殊性について語る。
旅行やアートなど服以外の何かになるかもしれない
「上質でミニマルな服を求めている人は『ジル・サンダー(JIL SANDER)』や『ザ・ロウ(THE ROW)』の扉をたたくこともあるだろうし、『メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)』や『セリーヌ』で経験を積んだナデージュ・ヴァネ・シビュルスキー(Nadege Vanhee-Cybulski)が手がける『エルメス(HERMES)』を見に行くかもしれない。私自身は、もともとフィービーによる『セリーヌ』を買いながら『ジル・サンダー』や『ザ・ロウ』も購入していたが、後者などの比率が増えるということもあるだろう。でもやはりフィービーの代わりはいないので、みんなの『次は誰に夢中になろう?何に投資しよう?』という気持ちが向く先は、ひょっとしたら旅行やアートなど服以外の何かになるかもしれない」。