「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」の不調を受け、同ブランドを擁するPVHコープ(PVH CORP)のエマニュエル・キリコ(Emanuel Chirico)会長兼最高経営責任者(CEO)が立て直し策を発表した。2018年8~10月期決算において、「カルバン・クライン」は売上高こそ前年同期比2.1%増の9億6300万ドル(約1088億円)となったものの、既存店の売り上げがおよそ2%下落しており、利払い前・税引き前当期利益(EBIT)は同14.7%減の1億2100万ドル(約136億円)だった。
キリコCEOは、ラフ・シモンズ(Raf Simons)=チーフ・クリエイティブ・オフィサーによるブランド刷新が「メーン顧客層にとってファッション的に先鋭的すぎ、価格帯も高すぎた」とし、「現在そうした間違いの修正に取り組んでいる。19年からは、『カルバン・クライン ジーンズ(CALVIN KLEIN JEANS)』でより商業的かつ顧客に合った製品を提供したい。今後はブランドのDNAを重視し、『カルバン・クライン』らしさを取り戻す。19年の春季で調整し、秋季には完全に再生させる」と語った。
なお、PVHコープは「カルバン・クライン205W39NYC」におよそ6000万~7000万ドル(約67億~79億円)の投資をしているが、期待したリターンが得られずに失望したとキリコCEOは語る。「19年の予算についてはよく検討し、必要かどうかを厳しく判断していく。私にとって、これは信頼性の問題。やるべきことはしっかりやらねばならないと確信しているので、予算構成を変えるつもりだ」と述べ、「18年のホリデーシーズンは、広告費の分配をイメージを重視したマーケティングからソーシャルメディア重視にシフトした。特にミレニアルとZ世代とのエンゲージメントを強化するべく、インスタグラムなどへの投稿を増やし、マイクロ・インフルエンサーと協働したり、ローカルなイベントを開催したりしている。19年は、さらなる変化を推進していく」とつけ加えた。
キリコCEOは、5月の時点ではラフ・シモンズの「カルバン・クライン」への貢献を高く評価していたが、業績の軟調を受けて一転。契約更新が19年8月に迫っている中、ラフの先行きを危ぶむ声も出てきた。マイケル・ビネッティ(Michael Binnetti)=クレディ・スイス(CREDIT SUISSE)小売業界アナリストは、「ラフ・シモンズは『カルバン・クライン』が不得手なタイプの製品を得意としている。同ブランドのメーン顧客層にとってはやや派手で、ファッション的に先鋭的すぎるかもしれない。デザインを変更するつもりがないなら、別のブランドに行ったほうが彼の持ち味を生かせるだろう」とコメントした。
一方で、キリコCEOの発言を受け、業界アナリストたちは「カルバン・クライン」の今後を楽観視している。米証券会社オデオン・キャピタル(ODEON CAPITAL)のアレックス・アーノルド(Alex Arnold)は「PVHコープは何が問題なのかを認識しており、迅速かつ積極的に取り組んでいる」と評価した。PVHコープの株価は、11月29日に第3四半期決算を発表した直後に下落したものの、30日昼には前日比0.1%増の109.94ドル(約1万2423円)をつけた。