ハナエモリ・アソシエイツは、「ハナエモリ(HANAE MORI)」の新デザイナーとして、パリ在住の松重健太と契約した。松重は11月から職務に就いており、2020年春夏物よりデザインを統括する。なお、15年春夏からブランドのディレクションを行っていた天津憂との契約は18年10月で満了していた。
松重は1988年生まれの30歳で、山口県出身。エスモード大阪在学中に神戸ファッションコンテストで大賞を受賞し、その副賞としてパリ・オートクチュール組合(通称サンディカ)校に留学した。卒業後にメゾンで経験を積む中で、14年にイエール国際モード&写真フェスティバルでグランプリを受賞。15年に自身のブランド「ケンタ マツシゲ(KENTA MATSUSHIGE)」を立ち上げ、サンディカの若手デザイナー支援プログラムなどで発表している。パリ仕込みの立体裁断による、ミニマルなデザインが持ち味だ。
松重を新デザイナーに選んだ理由は、「彼が“サンディカに愛されている男”だから」と佐藤哲郎ハナエモリ・アソシエイツ社長。若手デザイナーを探す中で、パリと日本、両方のエージェントから松重の名前が挙がったという。「ハナエモリ」は、森英恵がパリ・オートクチュール組合に属する唯一の東洋人として、パリでオートクチュールやプレタポルテを発表してきたブランド。そうしたブランドのDNAに、松重はぴったりという考えだ。松重の起用によって、「パリという外部からの視点で、改めて日本らしさとは何かを掘り起こす。彼の強みである立体裁断と、ブランドのレガシーが一体になるとどうなるのか、非常に楽しみ」と佐藤社長。松重とは、これからブランドの方向性について話を詰めていくという。
ハナエモリ・アソシエイツは「ハナエモリ」のライセンス権を持ち、婦人服や服飾雑貨、インテリア用品などのメーカーにライセンスを供与している。生産・販売を行っているのはライセンシー各社。松重は、ライセンス製品すべてのデザインをディレクションする。婦人服のライセンシーはオールスタイルで、銀座の路面店やホテル内のブティックなど、直営店3店と百貨店インショップを約60店持つ。既存顧客である60代も確保しつつ、松重の起用によってより若い客層の取り込みを目指す。
「若いデザイナーには、『ハナエモリ』で仕事をすることを、ファッション業界で大きく羽ばたいていくきっかけにしてほしい」と佐藤社長。今後も、「短くても4年」のタームで新進デザイナーと組んでいく考えを明かした。