興和と文部科学省の研究機関である農業・食品産業技術総合研究所(以下、農研機構)はこのほど、共同で研究を進めてきたミノムシの糸を商業化する技術に成功したと発表した。興和の広報担当者によると「ミノムシの糸はこれまで自然界で最強の繊維と言われてきたクモの糸を、弾性率、強度、タフネスの全てにおいて上回った」という。研究の中で、人工繁殖や大量飼育の方法と確立しており、興和は脱石油に貢献するサステイナブル素材として開発を進める。
今回の技術開発では、カイコから採取するシルクのように、ミノムシから一本の長い糸を採取する基本技術を考案し、特許を出願。またタフネス性だけでなく熱にも強く、樹脂と複合することで樹脂の強度を大幅に改善できるという。
昆虫から採取する糸としては家畜として4000年以上の長い歴史を持つカイコが知られている。カイコは長い歴史の中で品種改良を続けた結果、非常に生産性が高くなっており、ミノムシがそれ以上に高い生産性を持つようになれるかは不透明だ。興和は「大量飼育法や、その生産性については答えられない」という。また、カイコはこれまで農家での小規模飼育に加え、熊本のあつまるホールディングスがクリーンルームで大量飼育する画期的なスマートファクトリーを稼働させている。農研機構は熊本県のカイコのスマートファクトリーにも関わっており、ミノムシでもそういった革新的なスマートファクトリーを開発できるかも焦点になりそうだ。
なお、今回の技術はミノムシの糸をそのまま使うもの。スタートアップ企業のスパイバーの人工合成クモの糸の「クモノス」は、クモの糸の遺伝子を解析し、発酵などの化学的な処理を行った合成タンパク質で糸を作っており、昆虫の糸をそのまま使う、今回の技術とは根本的に異なる。