IT企業を中心に“ツイッター採用”なるものが増えている。ツイッター上で代表や社員個人自らが求人の投稿をし、志望者がコメントやダイレクトメッセージを返すという非常にカジュアルな採用活動だ。ファッション業界でもっとも有名な話といえば、前澤友作ZOZO社長が自身のツイッターで採用に関する質問を直接受け付けたり、アシスタントの募集をかけたことだろうが、直接会わずとも個人同士がコミュニケーションをとれるというSNS最大の特徴をうまく活用しているわけだ。
そんな経営者が多く利用するツイッター採用向きのSNSサービスも増えている。SNSを使って手軽に求人募集ができる「bosyu」やフォロワーからの匿名の質問に答えることができる質問箱サービスの「Peing」といったもので、ツイッターを日常的に利用しているユーザーであれば見かけたことがあるはずだ。インスタグラムで人気のメディア「古着女子」を運営するyutoriの片石貴展・最高経営責任者も「bosyu」経由で約100人から応募があり、正社員1人・兼業社員4人の採用が決まったことをツイッターで明かしている。
最近ではインスタグラムのストーリーズ機能にも質問箱機能が搭載されたため、ミレニアル世代には馴染みのある機能ともいえるが、気軽に質問を募集・回答できる「Peing」はすでに1日のアクティブユーザー数が100万を超える巨大サービスになった。実は「Peing」を運営するジラフもツイッター採用先進企業でもある。現在の社員数は80人程度だが、10月に入社した5人はなんと全員がツイッター採用。2017年末に入社した同社広報の内村佳世さんもその1人で、ツイッター採用について、「私自身転職のために専用アカウントを作りました。今では広報としてもツイッターを活用しており、個の力が生かされる時代だと感じます」と説明する。
こうした背景には、SNSを駆使する若い経営者が増えてきたこと、また、大企業でも個人のSNS活用を推進する企業姿勢ができてきたことがある。例えば、パラレルワークに寛容なことでも知られるサイボウズはまさに個の発信を推奨する代表的企業で、オウンドメディア「サイボウズ式」の編集部ほぼ全員が個人のSNSで発信をしていたり、同社の採用担当が「サイボウズを知るならフォローしておきたいTwitterアカウント30選」という記事を自身のnoteに書いているほどだ。
アパレル業界では、こうした個の発信力を活用したSNS採用は、まだあまり事例がない。10月末にはモテクリエイターのゆうこす(@yukos_kawaii)がツイッター採用に関する投稿をし、賛否が分かれるといったことも起きており、一般的な認知が進んでいるかといえば、まだまだ十分ではないのだろう。使い方一つで、もちろん炎上の危険もあるわけだが、これまでインスタグラムにおいて個人販売員らの発信力に頼ってきたアパレル企業としても、ツイッターというSNSの活用方法は少なからずあるのではないだろうか。