今秋冬のメンズバッグの展示会に見られる大きなトレンドは、カモフラージュ柄(迷彩柄・以下、カモフラ)の復活だ。コレクションでもここ数シーズン、ウエアのトレンドに再浮上している柄が、アクセサリーにも波及している。そもそも、ミリタリー由来のカモフラが日本で一大ブームを巻き起こしたのは、1990年代。「ア ベイシング エイプ(R)(A BATHING APE(R))」などの裏原宿系ブランドがグラフィカルなカモフラアイテムを提案し、若者を中心に人気を博した。その後も、メンズ・ファッションにおいて、欠かすことのできない存在になっているが、そのルーツゆえ、カジュアルな印象が強かったことは否めない。
今季のカモフラが今までとひと味違うのは、10代や20代だけでなく、それ以上の年代にも受け入れられるようなシックな“大人向けのカモフラ(以下、大人カモフラ)”であることだ。その特徴は大きく二つに分けられる。まずは、起毛素材に柄をのせることで、エレガントに仕上げているということ。例えば、「エフ・クリオ」と「タスティング」は牛革スエード、「トフ&ロードストーン」はヘアカーフ調の毛付き牛革を使用。その素材感から、ワンランク上の風格を感じさせるカモフラアイテムになっている。そして、もう一つは、柄を構成する色同士のコントラストを下げることで、オンからオフまで多彩なシーンに対応するアイテムになっているという点だ。「ウルティマ トーキョー」や「ダニエル&ボブ」がその代表例。また、「クリード」は、ベージュをベースにした迷彩柄の牛革を製品染めして同系色にまとめたバッグを提案。「マスターピース」に至っては、オールブラックながらジャカード織りで、日本列島の地形を潜ませた“ジャパニーズカモ”を描いている。
そんな“大人カモフラ”のアイテムはバイヤーからの評判も上々のようだ。三越伊勢丹の二村泰正=紳士第一商品部 鞄・革小物バイヤーは、「(カモフラは)カジュアルに留まらず、ビジネスアイテムにも多用されている。色や柄のバリエーションも増え、ビジネスシーンのコーディネートのハズしとしてオススメ」とコメント。先日まで行われていた15年春夏メンズでは、「カモフラは定番化しており、買い付けをさらに増やしている」という。また、ビームスの柴崎智典メンズカジュアルバイヤーは、特に買い付けの量に変化はないとしながらも、「チェックやストライプ同様、ベーシックな柄として認知され、メンズ、ウィメンズ問わず多様なスタイルに使用されるのでは」と話す。一層バリエーションの広がったカモフラは、今後も注目を集めそうだ。
トレンドの発端は「ヴァレンティノ」⁉
“大人カモフラ”の火付け役と言えるのが、「ヴァレンティノ(VALENTINO)」だ。2013年春夏にカプセルコレクション“カモフラージュ ロックスタッズ”でカモフラをフィーチャーして以来、メンズ・コレクションの象徴的な柄として、毎シーズンさまざまなアレンジを加えてウエアとアクセサリーを提案している。その手法は、キャンバスとレザーのパッチワークから、インターシャやジャカード織りまで多彩。上質な素材と卓越した職人技で、カモフラをエレガントに昇華した功績は大きい。