Photo by Yoshitake Ishikawa 1.2014-15年秋冬のレザー×ナイロンのバックパック(参考色) 20万円 2.コットンキャンバスのボストンバッグ 26万円(参考価格)
今秋冬のメンズバッグの展示会に見られる大きなトレンドは、カモフラージュ柄(迷彩柄・以下、カモフラ)の復活だ。コレクションでもここ数シーズン、ウエアのトレンドに再浮上している柄が、アクセサリーにも波及している。そもそも、ミリタリー由来のカモフラが日本で一大ブームを巻き起こしたのは、1990年代。「ア ベイシング エイプ(R)(A BATHING APE(R))」などの裏原宿系ブランドがグラフィカルなカモフラアイテムを提案し、若者を中心に人気を博した。その後も、メンズ・ファッションにおいて、欠かすことのできない存在になっているが、そのルーツゆえ、カジュアルな印象が強かったことは否めない。
1.エース傘下の「エフ・クリオ」は、スエードに迷彩柄をのせることで、シックに仕上げた“ジェラート・スカモ”を打ち出す。落ち着いたトーンと表情のある素材で、大人向けのカモフラアイテムとして提案する。価格は6万5000円 2.イギリス発の「タスティング」は、シンプルなトートバッグにカモフラを加えることで今季らしく仕上げた。スエードを用いているので、カジュアルになりすぎず、使いやすい。写真の色はヴァルカナイズ・ロンドン限定。価格は3万7200円 3.2013- 14年秋冬にメンズをスタートした「トフ&ロードストーン」からは、ブランド初のカモフラアイテムが登場する。素材に毛の抜けにくい毛付き牛革を使用したクラッチは、ドレスシーンにも対応する高級感を演出。価格は4万円
今季のカモフラが今までとひと味違うのは、10代や20代だけでなく、それ以上の年代にも受け入れられるようなシックな“大人向けのカモフラ(以下、大人カモフラ)”であることだ。その特徴は大きく二つに分けられる。まずは、起毛素材に柄をのせることで、エレガントに仕上げているということ。例えば、「エフ・クリオ」と「タスティング」は牛革スエード、「トフ&ロードストーン」はヘアカーフ調の毛付き牛革を使用。その素材感から、ワンランク上の風格を感じさせるカモフラアイテムになっている。そして、もう一つは、柄を構成する色同士のコントラストを下げることで、オンからオフまで多彩なシーンに対応するアイテムになっているという点だ。「ウルティマ トーキョー」や「ダニエル&ボブ」がその代表例。また、「クリード」は、ベージュをベースにした迷彩柄の牛革を製品染めして同系色にまとめたバッグを提案。「マスターピース」に至っては、オールブラックながらジャカード織りで、日本列島の地形を潜ませた“ジャパニーズカモ”を描いている。
1.エースが手掛ける「ウルティマ トーキョー」が提案するのは、コットンツイルの大型トートバッグ。表面にPUコーティングを施しているので水にも強く、ショルダーベルト付きなので、ジム通いや旅行にもピッタリだ。価格は2万5000円 2.「マスターピース」は、20周年記念モデルとして、真っ黒なカモフラアイテムを提案する。素材は、耐久性のある三層構造のコーデュラ®ナイロン。柄の中に潜ませた日本列島に、「日本から世界へ」という思いを込めた。価格は4万6000円 3.今年10周年を迎える「クリード」は、記念商品に迷彩柄を採用。得意とする製品染めを用いて柄を同系色でまとめ、定番モデルのボディバッグを新鮮な表情に仕上げている。チョコ(写真)、赤、緑、青の4色展開で、価格は2万1000円 4.セルツリミテッドの手掛けるイタリア発の「ダニエル&ボブ」は、しなやかなレザーを用いた“アルチェ”シリーズをシックなカモフラで提案する。限りなく低コントラストで仕上げているので、スーツにも合わせやすい。価格は4万3000円
そんな“大人カモフラ”のアイテムはバイヤーからの評判も上々のようだ。三越伊勢丹の二村泰正=紳士第一商品部 鞄・革小物バイヤーは、「(カモフラは)カジュアルに留まらず、ビジネスアイテムにも多用されている。色や柄のバリエーションも増え、ビジネスシーンのコーディネートのハズしとしてオススメ」とコメント。先日まで行われていた15年春夏メンズでは、「カモフラは定番化しており、買い付けをさらに増やしている」という。また、ビームスの柴崎智典メンズカジュアルバイヤーは、特に買い付けの量に変化はないとしながらも、「チェックやストライプ同様、ベーシックな柄として認知され、メンズ、ウィメンズ問わず多様なスタイルに使用されるのでは」と話す。一層バリエーションの広がったカモフラは、今後も注目を集めそうだ。
トレンドの発端は「ヴァレンティノ」⁉
“大人カモフラ”の火付け役と言えるのが、「ヴァレンティノ(VALENTINO)」だ。2013年春夏にカプセルコレクション“カモフラージュ ロックスタッズ”でカモフラをフィーチャーして以来、メンズ・コレクションの象徴的な柄として、毎シーズンさまざまなアレンジを加えてウエアとアクセサリーを提案している。その手法は、キャンバスとレザーのパッチワークから、インターシャやジャカード織りまで多彩。上質な素材と卓越した職人技で、カモフラをエレガントに昇華した功績は大きい。