ファッション

小津安二郎の映画がイメージ 「アスティエ・ド・ヴィラット」の2人が語る晩酌へのあこがれとクリエイションの背景

 フランス発ライフスタイルブランド「アスティエ・ド・ ヴィラット(ASTIER DE VILLATTE以下、アスティエ)」のデザイナーであるイヴァン・ぺリコリ(Ivan Pericoli)とブノワ・アスティエ・ド・ヴィラット(Benoit Astier de Villatte)が新作の晩酌コレクション発売に合わせて来日した。白い釉薬で独特な風合いの陶器のファンが多く、日本では、アッシュ・ぺー・フランス(以下、アッシュ・ぺー)などが輸入販売を行っている。東京・青山のエイチピーデコ(H.P.DECO)で開かれた発表会に合わせて来日したペリコリとド・ヴィラット2人に晩酌コレクションやブランドおよびクリエイションの背景について話を聞いた。

晩酌は憧れ

WWD:晩酌セットを作ったきっかけは?

イヴァン・ぺリコリ(以下、ぺリコリ):小津安二郎の映画が大好きで、「東京物語」や「彼岸花」「晩春」などの中の晩酌シーンに憧れていた。

ブノワ・アスティエ・ド・ヴィラット(以下、ド・ヴィラット):アッシュ・ぺーの村松(孝尚)社長と会話をしていて、晩酌シーンのジェスチャーをしたりして話が盛り上がったので作ってみることにした。今日は、東京・青山の飲食店「東京十月」で小津風のショートフィルムを撮影したよ。低いアングルから撮って料理は見えないようにね。村松社長も着物姿で登場しているんだ。

バルテュスとの深いつながり

WWD:ショップで上映したショートフィルムでは、スイスのバルテュス(Balthus)のグラン・シャレーを訪れた際のものだったが、バルテュスとはどんな存在か?

ド・ヴィラット:バルテュスがローマのアカデミー・ド・フランスの館長だった時、画家だった父が留学生として在籍していた。寄宿先のヴィラ・メディチでバルテュス夫妻と親交を深め、父は芸術的な面でバルテュスから大きな影響を受けたようだ。そして、そのエスプリを受け継いだというわけだ。だから、バルテュスは先生のような存在。

WWD:バルテュスの妻の節子クロソフスカ・ド・ローラ(Setsuko Klossowska de Rola)伯爵夫人とのコラボレーションはどのように始まったか?

ド・ヴィラット:久々に節子夫人から電話をもらい再会した。話しているうちに、一緒に物作りをしようということになった。そして、われわれのアトリエ内に節子夫人専用のアトリエを設けた。それがコラボレーションの始まりだ。

WWD:キャンドルとインセンスに新たに“アスティエ・ド・バルテュス”という香りが加わったが?

ド・ヴィラット:バルテュス夫妻の娘の春美(クロソフスカ・ド・ローラ)から、バルテュスのアトリエの香りを再現してほしいと頼まれたんだ。テレパンチン(マツ科植物の樹脂)をベースにしたインセンスとキャンドルを作ったよ。スイスのバルテュスの邸宅のグラン・シャレーでは、節子をはじめ、春美の家族らと共に楽しいバカンスを過ごしたよ。映画監督のヴィム・ヴェンダース(Wim Wenders)も滞在していた。

WWD:春美さんはジュエリーのデザインもするようだが?

ド・ヴィラット:ブロンズや木で作った彼女の彫刻作品もすばらしい。ワニをモチーフにしたベンチなどもあるんだ。

興味のある素材や楽しいとことを常に探求

WWD:「アスティエ」を始めたきっかけは?

ド・ヴィラット:ブノワとはパリのエコール・デ・ボザール(パリ国立高等美術学校)で出会った。彼の父がアーティストでアトリエに陶芸の窯があったんだ。それを使ってテラコッタのクープ(杯)を焼いたのがわれわれの陶器の第一号になった。そこからアイデアが広がり、陶器や家具を職人的な技法で作る会社を立ち上げた。

ぺリコリ:1996年にインテリア雑貨の見本市「メゾン・エ・オブジェ(MAISON ET OBJET)」に初出展したら、世界中のバイヤーからオーダーが入った。それが「アスティエ・ド・ヴィラット」の始まりだった。

WWD:ブランドの美学やエスプリは?

ド・ヴィラット:過去に存在したオブジェをもとに、われわれのニュアンスを加えて新しいフォームにする手法を取っている。だから、興味のある素材や楽しいと思うことを常に探求している。われわれが楽しみながら制作することを心がけている。

WWD:陶器やノートなど、静物的なものが多いのは?

ぺリコリ:数えきれないほど美術館に通ったり、画集作品を見るなど、長い時間をかけてじっくりと作品と向き合うようにしている。だから、画家と同じ視点でモノを見るようになった。

WWD:陶器は全てパリのアトリエで手作りしているか?チベット人の職人がいると聞いたが?

ド・ヴィラット:そうだよ。チベット人の職人が多いね。50人ほどいるよ。一緒に仕事をしたチベット人が優秀だったから。次々と増えた感じだね。

WWD:ブランドを運営する上で、2人の役割分担は?

ぺリコリ:特に役割は分けてないよ。クリエイションからビジネスまで全てまとまるよう2人で一緒に手掛けている。

WWD:日本でお気に入りの場所は?

ぺリコリ:奈良が大好きだ。小さなお寺がたくさんあって落ち着くから。

ド・ヴィラット:聖徳太子ゆかりの法隆寺はとても興味深いね。

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