サステイナビリティの実現を目指した新ブランド「パンゲア(PANGAIA)」が、米国で注目を集めている。11月3、4日開催のストリートの祭典「コンプレックスコン(COMPLEXCON)」でブースを出展、会場脇のロングビーチではペットボトルなどの海岸の海洋ゴミを清掃するワークショップを開催した。イベントのホストであるファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)や元コレットのサラ・アンデルマン(Sarah Andelman)、俳優のジェイデン・スミス(Jaden Smith)らがブースを訪れ、さらにファレルはインスタのストーリーに「あなたが本当の変化を起こす番だ。4日朝には『パンゲア』とコンプレックスコン、(海洋プラスチック汚染問題にフォーカスした非営利団体)『5Gyres(ファイブ・ジャイルズ)』とともに『ビッグ・オーシャン・プラスチック・クリーンアップ』を行う。袖をまくって、地球にとってもいいことを一緒にやらないか?変化を起こすべきだなんて話はするな。もうみんな知っていること。君が変化すべきだ」と投稿するなど、デビューブランドとしては異例とも言えるキャンペーンを展開した。
「パンゲア」はブランドのステートメントとして、「責任ある生産と消費への世界の移行を加速する使命を持つ人々のグローバルな集団」であると説明。衣料品に加え、環境に配慮した個人や組織を結びつける最新の環境革新とソリューションのためのグローバルなオープンソースプラットフォームを構築し、科学者、技術者、アーティスト、デザイナーなどが参画し、再生可能な代替資源やバイオ素材、ラボ生成素材などを使った、持続可能なワードローブを提供すると説明している。すべての商品パッケージに、バイオベースのプラスチック代替品として注目されている、コンポーザーで24週間以内に完全消滅できるTIPAパッケージを使用する。
初コレクションでは、バイオベースや再生ペットボトルなどのリサイクル素材をメインに使用。海藻繊維を20%含有したTシャツをはじめ、パーカ、トラックパンツを150~300ドル(約1万6800~3万3600円)で販売。各アイテムにはペパーミントオイル加工を施し、10回程度まで洗濯することなく着用できるようにすることで、水資源の節約につなげているという。注目商品は、ダウン(羽毛)の代わりにドライフラワー“フラワーダウン”を使用したパフジャケットだ。画期的なビーガン技術を使って中綿を開発。シェル部分についてもリサイクル素材とペットボトル再生繊維から作り上げられており、900ドル(約10万800円)で販売する。
まずは自社ECを中心に世界に向けた販売を開始。今後は直営展開や卸売りなどの販路も検討していく。フラワーダウン・パフジャケットを皮切りに、今後は、ラグジュアリー・ブランドやグローバルブランドなどとも協業し、世界を良い方向に導くためのインパクトを強めたい考え。日本でも来春をメドに展開を本格化する予定だ。
松下久美:「日本繊維新聞」の小売り・流通記者、「WWDジャパン」の編集記者、デスク、シニアエディターとして、20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。「ザラ」「H&M」「ユニクロ」などのグローバルSPA企業や、アダストリア、ストライプインターナショナル、バロックジャパンリミテッド、マッシュホールディングスなどの国内有力小売企業、「ユナイテッドアローズ」「ビームス」を筆頭としたセレクトショップの他、百貨店やファッションビルもカバー。TGCの愛称で知られる「東京ガールズコレクション」の特別番組では解説を担当。2017年に独立。著書に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)