伊藤忠商事の繊維カンパニープレジデントの小関秀一・専務執行役員は13日の定例記者会見で、デサント問題に触れ「お互いにデサントの企業価値を向上させようという気持ちは同じ。ただ、(持ち株比率が)25%のときはなかなか聞いてもらえなかったので30%にまで引き上げて聞いてくださいよ、と。まだ聞いていただけていないが」と騒動の裏側を語った。
伊藤忠は長らくデサントの筆頭株主で、1980年代の“マンシング危機”と1998年の“アディダスショック“という2度の経営危機をともに乗り切ってきたが、創業家出身の石本雅敏デサント社長との間で経営方針の対立が表面化。伊藤忠は7月4日以降3度にわたる株式の買い増しを行なう一方、デサントも伊藤忠への事前通告なしにワコールホールディングスとの業務提携を発表した。今も溝は埋まっていない。
小関専務はデサントについて「売上高が約1500億円で純利益が65億円(19年3月期見通し)、時価総額も売上高とほぼ同等といい会社になった。ただ、この業界でずっといいなんてことはなく、今は好調の韓国も変わる可能性だってある。これからは今まで以上に経営の難易度が高くなる。いいときだからこそ一本足打法の経営にメスをいれるべきだといい続けてきた」。デサントは売上高の約5割を韓国が占めており、伊藤忠は日本と中国に対するテコ入れを求めてきた。「基本的に“水沢ダウン”を筆頭にデサントの商品力は高い。競合の大手スポーツアパレルは日本事業で稼ぐ体制を築いており、デサントも商品力の高さを収益に変えるためにまだまだやることがある」と課題を指摘。また、中国では現地の大手スポーツアパレルのアンタが6割、デサントが3割、伊藤忠が1割を出資して事業展開しているが、「中国ではスピードが必要だと、われわれの経験や感性で言ってきた。にもかかわらず、(デサントは)ゆっくりやりたい、と。どうも噛み合わない」という。
その上で2度の経営危機を一緒に乗り切ってきたことに触れ「アディダスショックのときには伊藤忠から派遣した役員がリストラを行った。とてもつらい経験だった。また経営危機になったら、どうなるんだという思いがある。だからこそ、良いときの今こそ経営改革をやっておかないと。それは強く申し上げたい」。
引き続き小関専務は関係回復に努める。「メディア上では「メディア上ではいろいろ言われているが、デサントの石本社長とは継続的に話し合いを続けている。お互いが協力して企業価値を上げることでは一致している」。今後の株式の買い増しについて尋ねられると「いまはこのまま」と言うにとどめた。
[related post="307536" title="デサントが"アディダスショック"から復活できた理由"]