2018年もデザインの模倣や労働環境問題など、さまざまトラブルが噴出し、訴訟に発展したケースも多かった。法令遵守の意識が高まる中、国内外でファッションローと呼ばれる法概念が浸透しようとしている。
日本初の解説書「ファッションロー」(勁草書房)によると、ファッションローとは、「ファッションデザイナーやファッション産業に関わる知的財産法、契約法、会社法、商法、不動産法、労働法、広告法、国際取引法、関税法等を含む法領域の総称」を指すという。範囲は広いが、最低限度の法知識を持つことは、職種を問わず円滑なビジネスのために必要だ。
そこで、2018年に「WWD JAPAN.com」の記事の中から、話題となったファッション業界の訴訟をまとめてみた。あわせて、SNSをにぎわせた疑惑の騒動の他、業界人をサポートする弁護士などの活動を紹介する。
【2018年話題になったファッション業界の訴訟まとめ】
1
/
10
【SNSから訴訟問題や炎上騒動に発展】
SNSが発端となって訴訟や炎上騒動に発展することも少なくない。最近では、インフルエンサーの「ダイエット プラダ(Diet PRADA)」によるSNS上での指摘が追い討ちをかけ、「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」が中国市場を失いかねない事態に追い込まれたように 、SNSの影響力は今やあなどれない。
1
/
5
【氾濫する偽物を逆手にとった戦略も】
上で見た通り、ファッション業界における訴訟や疑惑、炎上騒ぎは後を絶たない。一方でブランド側が、コピー商品が蔓延する現状を逆手に取ったマーケティングを行うこともある。“パロディー”も業界ではよく見る手法だ。
1
/
4
【ファッション業界をサポートする法律家たち】
複雑な法解釈に頭を悩ませている業界人もいるのではないだろうか。そんな業界人に手を差し伸べるファッションローに精通した法律家を一部紹介したい。彼らは無料の法律相談を設けるなど、門戸を広く開いている。ファッションローを解説するイベントや弁護士らによる講習会など、現在では数多くのファッションロー関連イベントが企画されている。また、「WWDジャパン」は毎月、ファッションローを専門とする法律家を招く「ファッションロー相談所」を連載している。
1
/
5
ファッションと法律の架け橋 ファッション専門の弁護士集団「ファッション&ロー」に聞く
労働問題や模倣品問題など、ファッション業界を取り巻くトラブルは年々増えている。またトラブル増加に伴い、ファッション業界に関連する法律を総称する“ファッションロー”という概念が日本に浸透し始め、ファッションローに携わる専門家も増えている。弁護士を中心にファッションローに関するセミナーの開催や無料法律相談などを実施する専門家集団「ファッション&ロー(FASHION & LAW)」もその一つだ。彼らは芸術や文化に関するサポート活動を行う非営利団体「アーツ&ロー(ARTS & LAW)」に所属する弁護士たちがファッションローに特化することを目指して結成したチームだ。彼らにファッション業界の現状を聞くと、「あらゆる人が同じようなことで困っていて、まずは弁護士に“相談する”という方法があることを知ってほしい」と口をそろえて語る。
ファッションエディターから弁護士へ 新人弁護士が目指すファッション業界との架け橋
林総合法律事務所の海老澤美幸・弁護士は、国家公務員からファッションエディターに転身し、2016年から新人弁護士として活動する異色の経歴の持ち主だ。「アクションしなければ何も動かないと思っているので、やるだけやってみようと思った。仕事をガラッと変える時もワクワク感しかない」と楽しそうに語る海老澤弁護士はチャレンジすることに前向きで、常に笑顔が絶えない。何人もの弁護士を知る記者から見ても、とても珍しいタイプの弁護士だ。そんな海老澤弁護士のキャリアの変遷の理由や、弁護士としてファッション業界とどう関わっていきたいのかを聞いた。
ファッション関係者のための法律相談窓口 「ファッションロートウキョウ」がオープン
ファッション業界に関するあらゆる問題を相談することができる専門窓口「ファッションロートウキョウ」のウェブサイトが1月4日にオープンした。同サイトはファッション業界に関わるすべての人が直面する法律問題を気軽に相談できる“シェルター”としての機能を果たすことを目指し、具体的な法律相談の問い合わせ窓口としてだけでなく、多くの人が知りたいと感じている問題を取り上げる他、講演会の開催など情報発信も行う予定だ。また、初回の法律相談は無料だという。
弁護士、特許事務所、企業内法務部の立場から解説 ファッションローに関する連続講座を開催
「Fashion Biz Study ファッションローの基礎」の続編として企画された連続セミナー「Fashion Biz Study ファッションローの実務」。全3回の連続講座で、第1回は12月に「ファッション・アパレル企業における法務部」をテーマに講義した。第2回は2019年1月16日に「ファッション・アパレル事業と権利化実務」をテーマに、第3回は2月20日に「ファッションを巡る契約と紛争」をテーマに講義する。
“ファッションロー”を学ぶ スパイラルで全5回の連続講座開催
ファッションに関する講座を企画するファッション スタディーズ(FASHIONSTUDIES)が開催した連続セミナー「Fashion Biz Study ファッションローの基礎」。5~9月の期間、5回にわたって商標法、意匠法・著作権法、特許法などファッションローの基礎について講義した。
【「ファッションロー相談所」掲載号紹介】
・「WWDジャパン」8月6日・13日合併号「ファッションロー相談所 Vol.1 最近はやりの“ブート品”って違法なの?」
・「WWDジャパン」9月3日号「ファッションロー相談所 Vol.2 二次流通”や“転売”って何が問題なの?」
・「WWDジャパン」10月1日号「ファッションロー相談所 Vol.3 モデルへの接し方、何が正解?」
・「WWDジャパン」11月5日号「ファッションロー相談所 Vol.4 コスプレから考える著作権のいろいろ」
・「WWDジャパン」12月3号「ファッションロー相談所 Vol.5 商標登録された“色”は使えなくなるの?」
秋吉成紀(あきよしなるき) :1994年生まれ。2018年1月から「WWDジャパン」でアルバイト中。